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 無実を訴える被告を支えて、法廷で検察と対峙(たいじ)する――。裁判ドラマでおなじみの刑事弁護を専門とする公設事務所「大阪パブリック法律事務所」(旧・刑事こうせつ法律事務所)が5月末で閉鎖する。15年の歩みを振り返るシンポジウムが27日、大阪市内で開かれる。

 事務所の壁に貼られた大きな大阪府の地図に、警察署や拘置所に赤や青のピンが打たれている。勾留された容疑者や被告に、事務所の弁護士が接見に行っていることを示すものだ。

 「事務所に入ってまず教えられたのが接見の大切さでした」。そう語るのは、同事務所に所属する辻亮弁護士。勾留された容疑者や被告は自由を奪われ、不安な日々を送る。そうした人たちを励まし、家族との連絡役になるなどして信頼関係を築くことが弁護活動に重要だからだ。

 同事務所は2004年、刑事弁護を専門に手がける全国初の公設事務所として大阪弁護士会が設立し、これまで計38人が在籍。同事務所によると、大阪地裁であった約1400件の裁判員裁判の1割以上を担い、違法捜査も追及してきた。また、尋問や弁論などの実務を教える司法修習生向けセミナーを開くなど人材育成にも取り組んできた。

 だが近年は刑事弁護に取り組む弁護士が増えてきたことなどから、家賃や設備費などを負担してきた大阪弁護士会と協議のうえ、閉鎖を決めたという。所長の下村忠利弁護士は「研修を催したり、一緒に弁護人を務めたりして刑事弁護を担う弁護士を育てるのもミッションの一つ。我々の活動は実を結んだと自負している」と話す。

 神戸大の宮沢節生名誉教授(法社会学)によると、米国では連邦政府や州政府が公費で設立する刑事弁護専門の公設事務所が多数あるが、日本では弁護士会が支援する公設事務所の一部など、刑事弁護専門の事務所はごく少数だという。宮沢名誉教授は「15年で日本の刑事弁護のレベルは飛躍的に上がった。大阪パブリック法律事務所が果たした役割は大きい」と語った。

 27日午後1時から、大阪パブリック法律事務所の活動を振り返るシンポジウムが大阪市北区の弁護士会館で開かれる。申し込みや問い合わせは弁護士会ホームページ(http://www.osakaben.or.jp/別ウインドウで開きます)。(大貫聡子)

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 公設事務所 弁護士過疎解消や公益性が高い事件を扱うことを目的に、日本弁護士連合会や各地の弁護士会などが運営を支援する法律事務所。2018年の弁護士白書によれば、都市型は東京や兵庫など全国13カ所ある。米国では公費で設立されている。