【動画】会議改革で社員みんなが意見を出し合う会社に=丸山ひかり撮影
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 カイシャの会議について、さまざまな悩みが寄せられています。企業ごと、組織ごとに、事情はずいぶん違うでしょう。それでも、悩みの根本には、共通する問題や課題がありそうです。どうすれば意味のある会議にできるのでしょうか。具体的な事例から、みなさんと考えます。

立ったままで時間削減

 事務機器メーカーのコクヨ(大阪市)やオカムラ(横浜市)は、様々な企業からオフィスの設計を頼まれます。どんな会議室にしたらいいかという相談から、会議のあり方に悩む会社が多いことが分かります。

 例えば、「だらだらと長引きがちな会議」。社員が会議室にこもれば、その分ほかの仕事に充てる時間が減ることになります。会議室が空かなければ、次の会議を開くこともできません。参加してもだらだらと仕事の内容や成果を報告し、ほかの参加者はそれをただ聞くだけ。さまざまな立場からかわされるべき議論もまったく盛り上がらない。いったい何のための会議なのか、その目的すらあいまい。こんな会議を効率よく短時間で終わらせるためにはどうすればよいのでしょうか。

 生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)は、立ったままやる「立ち会議」を10年以上前に導入しました。「立つと疲れるから早めに情報共有や決定をしようとする」(広報)と、すっかり定着しました。

 会議室に長時間こもることで、部署ごとの縦割り意識が大きくなるという悩みも、多くの会社が抱えています。ある部署が難題を抱えていても、密室の会議でしか情報共有されなければ、全社的な問題ととらえることができません。

 ペット保険のアニコム損害保険(東京)のオフィスの会議室はオカムラが手がけ、全面ガラス張りにしました。誰が、どのぐらいの時間、どんな雰囲気で議論しているか、別の部署の社員らにも伝わるようにしたのです。

 やはりオカムラが手がけた神戸市にあるアシックスの研究所では、席の配置を工夫しました。4人の部長の席を近づけ、そこから放射状に部下の席を並べたのです。「さあ会議だと構えなくても、部長同士が気軽に情報交換できるようになった」という効果があったといいます。

 どうやら若手が会議で発言しにくいようだ――。そんな雰囲気を察して編み出されたのが「サウナ会議」です。コクヨの川田直樹さん(34)が若手社員をサウナに誘うと、汗を流しながらこれまで聞けなかったアイデアが出てきたといいます。川田さんの提案で、サウナで体も心もほぐれた後に館内でそのまま会議できるスパ施設も横浜市に登場しました。(金本有加)

タイマーで時間管理 意見次々

 カリスマ的な経営者がすべてを決め、社員はそれに従う――。中小企業によくある状態から会議改革に取り組み、社員の意識が変わった会社があります。

 日本茶などの包装資材を手がける「吉村」(東京都、社員234人)。何でも一刀両断で決断するタイプだった先代社長から、娘の橋本久美子社長が引き継いだのは2005年。売り上げはそれまでの10年間で7億円落ちていました。「業績を上げる答えを見つけようと社員に意見を聞いたのですが、『誰かに決めて欲しい』という意識が根強く、リーダーシップがないと不満が出ました」。現場を回り「皆で考えたい」と思いを伝え、会社の課題を自分ごとにしてもらうため、1人ひとつは何かの会議に入ってもらうことに。さらに、会議改革に詳しいコンサルタントの沖本るり子さんに指導を受けました。

 今月、吉村の社員13人が参加した会議を取材しました。1テーマにつき説明や議論、まとめにあてる時間は20分前後。議論は2グループに分かれ、タイマーで時間を管理し、1人1回20秒以内で、意見を次々に出します。大きな脱線はなく対立意見も率直に出せる印象でした。

 同社では取締役会を含め、全ての会議をこの手法で進めています。橋本社長は「会議後に『本当はこう思っていた』というグチはなくなり、社内の風通しも良くなりました」と話します。(丸山ひかり)

ルール明文化 効率と質向上

 「試しているのは当たり前のことばかりですが、やってこそ分かることも多い」。昨夏、会議の改善を始めた富士通の岡田英人・行政ソリューション事業本部長はそう話します。

 官公庁にシステムを導入し管理する事業本部ですが、子会社3社と統合して1300人の大所帯になり、会議の重複などの無駄が目立つようになったことが、きっかけだったそうです。モデルケースを作るため、神奈川県川崎市を担当するエンジニア7人のチームを指名。担当者が事前に会議の議題と時間配分を伝達し、終了時に決定事項とその担当者を確認することなどをルール化し、冊子にまとめました。

 チームの責任者、結城武彦さんは「ルールの中には元から不文律だった内容もありますが、明文化で、それに従うべき根拠がはっきりし、より的確に取り組めるようになりました」といいます。その結果、業務のうち会議の時間は約3割減り、その分、自治体に提案する新規事業を検討する時間も増えるなど、仕事の効率と質も上がったそうです。

 手応えを踏まえ岡田さんは、年度内に事業本部全体の会議改善計画を立てる、と社内で宣言しました。「改善はトップダウンの指示と、ボトムアップの知見の双方が大事だと思います。成功させ、改善ノウハウ自体も社の商品にしたい」(長野剛)

「眠い」「大変」 みんなの悩み

 「会議HACK!」は会議の改善ノウハウを企業やコンサルタントに取材し、発信しているウェブサイトです。大手貸会議室検索サービスの会社が運営し、毎月8本前後の記事を公開しています。

 お役立ち情報を通じて検索サイトへ誘客するため、ネットで会議について調べる人がどんなキーワードを使っているかを探ると、「特に多かったのは『会議 眠い』。『大変』『つまらない』も目立ちました」とメイン執筆者の鈴木涼太さんは振り返ります。

 取材で見えてきた眠くてつらい会議の特徴は、①どこまで議論するかの「ゴール」の設定がない②意思決定なのか情報共有なのかなどの位置付けが不明③上下関係のせいで発言しづらい。「それをなくすためにどうするかが改善の出発点であるべきです」と鈴木さん。議題に「?」をつけて、解決すべき課題を明確にする手法を教えてくれた人も。「会議の改善に成功する会社は『何のために』『どう』変えるかを、明確にしている会社だと思います」(長野剛)

バブル後の企業体質 まず会議から改革 末松千尋・京都大経営管理大学院教授(組織情報学)

 会議とは、明瞭かつダントツに、その企業の体質が見える場所です。10年ほど前、業務に関わるコミュニケーション全般の効率について調査しているときにそれに気付き、数値化して検証しました。

 対象にしたのは、意思決定や業務執行の管理をする会議。実際に国内19企業の会議を調査し、会議の設計の明確さや、設計通り進められる体制かなどを検証しました。具体的には、目的は明確か、どこまで決めるかを設定しているか、進行役が決まっているか、終了時間が守られたか、決定事項がその後きちんと執行されるかなど、67項目について採点し2014年に発表しました。その結果は見事に業績と比例しました。

 こうした行動は会議を超え、企業の根本的な実力に寄与していると考えています。そして、より高度な意思決定と実行管理を可能にするのです。

 欧米の伝統的な大企業では、リーダーシップを軸にした運営が主流です。社内のトップから現場まで、各階層に明確な責任と権限を与えたリーダーを配置。各リーダーは部下から情報と提言を広く集め、最後は個人の責任で取捨選択する。合意形成に基づかない意思決定は迅速で、リーダーが有能なら機能的です。

 一方で近年、米シリコンバレーのIT企業に象徴される新興企業に、合意形成を軸とした運営形態が出てきました。彼らの勢いを見れば、リーダーシップ型より発展性が高い形態と考えられます。ただし、合意を重んじる運営は一歩間違えれば何も決まらず、迷走します。成功している彼らの会議を見ると、議事進行のスキルは卓越しています。

 一方で実際、日本では合意形成が尊重されてきましたが、そのためのルールも社員の自覚も足りず、停滞する企業が多いように思います。

 日本企業の体質改善が進まない理由には、バブル崩壊とネット時代の到来が連続した不運もあります。産業の主役はバブル期までは製造業。よいものを効率よく作っていれば、企業戦略など複雑な意思決定の重要性はまだ、高くありませんでした。

 バブル後、業績が右肩下がりになると企業人は保守化し、従来の業務の進め方を改めにくくなります。他方、ネットは市場を根本的に変え、企業にはより迅速で高度な戦略が求められ、決める力のない企業は取り残されました。そんな企業は業績を下げ、さらに保守化するという悪循環もありそうです。

 そこから脱却するには、目に見えやすい会議の改革から始めるのも有効でしょう。リーダーシップ型でも合意型でも、会議での高度な意思決定と、その確実な実行を、ルールを定め管理する。本来は経営者の課題ですが、斜陽で保守化した彼らには難しい。ボトムアップでの改革に期待します。(聞き手・長野剛)

同じ議事3回 内職多発

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

 

●同じ議事で3回

 月一、同じ議事で3回会議があります。親会社の幹部職のみで1回。組合の役員を入れて1回。関連会社を入れて1回。さらに各部署でその内容の報告会議のようなものも、存在します。1回で済ませろよとの印象を受けます。会議が仕事だと思っている人間が多過ぎです。どこかで聞いたようなセリフですが、会議室で問題が起こっているのではありません。現場を見てみろよ!(製造業 福井県・50代男性)

 

●私語、内職、居眠り

 部局構成員全員で集まる会議が毎月あります。会議中、私語や内職・居眠りもよく見られ、長時間多人数を束縛してまで集まる意義を感じられず、座っているのが苦痛です。見直す動きが出てきて欲しいです。(官公庁、諸団体 島根県・30代女性)

●会社の老化が進む

 予算等のお金に関する議題が多く、決定の多くは根回しとトップダウン。上下関係が浮き彫りになることが多く、もっと若い者の斬新な血肉(奇抜なアイデア)を採り入れ新陳代謝を良くしないと、会社の老化が進む……。とは言え、十数年前から比べると内容の濃さや時短など素晴らしく改善はされている。(サービス業 愛知県・50代男性)

 

●会議することに陶酔

 会議をしてることに陶酔してるのでやめた方が良いと思う。(医療、福祉 東京都・20代女性)

●頻繁に上京、経費の無駄

 会議の資料作成で本来の仕事ができない。大量にコピーされ結局活用されず無駄。会議で頻繁に上京してるが、上司の懇談会にすぎず経費の無駄である。(製造業 三重県・40代男性)

 

●実際の仕事は会議の後

 上の人は無駄な会議なんてやってないと言うけど、周りの人も同じ意見? やり方などを見直す考えすら否定するやり方に疑問。会議で結論が出ても担当者の実際の仕事はそこから始まる。会議だけで時間をかけ過ぎても仕事が進むのは遅くなる。指示する人とされる人で状況は違う。上司はそこも理解すべき。(製造業 神奈川県・40代女性)

 

●夜のエンドレス会議

 夜の会議が多くて困る。しかもエンドレス。(サービス業 東京都・40代男性)

 

●知識ひけらかす場

 特に必要のない部署の長まで招集して周知を図ろうと、いや、ただ自分の知識をひけらかす場となるケースの会議のなんと多いことか! トップの人間がそれを正さないため、業務の遂行を妨げる会議にまた駆り出され、それでいて結果も求められる。いつ仕事をすればよいのか……。(その他 東京都・50代男性)

 

●会議のため事前会議

 議案を決めること。アクションについて決める。必ずいつ、だれが、何を、どこまで、支援者はだれ、を決める。一番無駄な会議は一応呼ばれる会議。あとで聞いてないと言われないため。会議の準備のために招集される事前会議。ひどい時は事前の事前あり。特に上位の管理職が出席する会議ほど生産性が落ちると感じる。(一橋大の)軽部大先生は経営者が率先してと言ってるが、こういう記事が出るとバックグラウンドがないのに前線に出て、勝手な解釈で持ち帰り、色々タスクを立ち上げ、会議が増えていく。その会議はほぼ上司の勉強会。要はリーダーの力量だけど、会議の整理整頓は一番大事。会議は定常業務の生産性を落とす。創造性も低下して良いことなし。(製造業 神奈川県・40代男性)

 

●会議中に「何のため?」

 目的が不明確な会議が多く、会議中に「何のための会議か?」と発言した結果、会議の時間や回数が減った。(金融、保険、商社 海外・40代男性)

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記者の気付き

 「オレの時はね」「昔はさぁ」。こんな感じで、会議中に話題が「脱線」することがあります。そこからヒントが見えてくれば良いですが、だらだらと終了時刻を過ぎ、「何を決めたかったんだっけ?」となることも。でも今回取材した会社「吉村」では、会議のプロに学んで効率的なやり方を徹底し、議題に基づいた議論がされていました。会社によりどんな方法が適しているかは違うとは思いますが、1回目に登場した立教大学の中原淳教授が指摘したように、「会議をマネジメントする重要性」を改めて感じています。(丸山ひかり)

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 先輩に囲まれている私は、会議で発言する前にまず、熟考します。自分の考えがバランスを欠いていないか。受け入れられるのか。質問された際の答えも用意しなければ――。提案が通っても、仕事が増えるのは困るなあ。そんな後ろ向きな考えも頭をもたげ、発言できずに終わってしまうこともあります。今回の取材で、サウナやコスプレなどの「荒業」で若手の議論参加を促す取り組みも知りました。悩んでいるのは自分だけではないと気づき、ちょっと安心。会議って、そんなに構えなくてもいいものなのかもしれません。(金本有加)

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アンケート「ペットとどう出会う?」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

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