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 この大型連休、車や電車や船などで、遠出を計画している人も多いと思います。そんなときに心配なのが「乗り物酔い」。特に小中学生くらいの子どもは、大人よりも乗り物に酔いやすいといいます。酔いにくくするコツや、酔ってしまったときの対処法、市販薬を選ぶ時の注意点は?

なぜ起こる? 慣れない揺れで、自律神経が乱れる

 乗り物で揺られているうちに、あくびが出たり生つばがわいたりして、むかむかと気持ちが悪くなり吐いてしまった――。そんな経験はあるだろうか。他にも、顔面が蒼白(そうはく)になったり、冷や汗がでたり、脈拍が弱くなったり……。「動揺病」とも呼ばれる乗り物酔いのこうした症状は、実はすべて自律神経が不安定になって起こるのだという。

 乗り物酔いはどのようにして起こるのか。宇宙酔いなどの研究で知られる、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉(いんこう)科の石井正則医師によると、乗り物酔いは三つの段階を踏んで進んでいく。

乗り物酔いの3段階
目と耳の情報にズレ→脳が不快と判断→自律神経が乱れ多様な症状

 出発点になるのは、目から入る情報と耳で感じている情報のズレだ。私たちは、目から入る視野の情報と、耳の中で感知している加速度や傾きの情報を使って、体のバランスをとっている。本来、目と耳の情報は一致していて、脳の中で情報のネットワークが形成されているのだという。ところが、慣れていない乗り物の揺れや、急発進や急ブレーキなどを経験すると、目と耳の情報にズレが生じる。これが、乗り物酔いへの第一の段階だ。

 このズレの情報は、脳の中で過去の経験と照らし合わせて「不快」か「快」かが判断される。ここで不快と判断されるのが第二の段階。この不快という情報によって自律神経系のスイッチが入って興奮状態になると、さまざまな症状が現れるのだという。これが第三の段階だ。「スイッチが入ると、基本的には止められません」と石井さん。

 乗り物酔いは、幼い子どもでは起こりにくいが、小学校に入る頃から増え始める。小学校高学年から中学校低学年くらいまでが起こりやすさのピークで、3~4割に乗り物酔いがあるとする報告がある。その後、中学校の高学年以降は徐々に減っていく。子どもは脳や自律神経の発達が未熟で、乗り物に乗るなどの経験値も少ないため、酔いやすいと考えられているのだという。

予防は? 乗り物での過ごし方に注意を

 乗り物酔いを起こしにくくするには、目と耳の情報の「ズレ」と「不快な要素」をできるだけへらすことが大切だ。

 ズレを減らすためには、車の中で本を読んだり、スマホの画面を見たりすることは避けたほうがよい。月や星など遠くの動かない景色を眺めるとよいそうだ。また、体を起こして座っているよりは、体を寝かせている方が耳の中で加速度を感じにくくなるので酔い防止になるという。「船などは、可能なら横になる。車ならリクライニングを使う。難しければ、頭が動かないように、ヘッドレストを使うのもよいでしょう」と石井さん。急発進や急ブレーキが繰り返されると酔いやすくなるので、マイカーなどでは運転にも気をつけたい。

 不快感を減らすためには、蒸し暑くならないように窓をあけるなどして室内の環境を調節し、体をしめつける服やベルトなどはゆるめる。満腹、胃のもたれ、空腹や寝不足なども、酔いの要因になるので要注意だ。芳香剤などの臭いも、苦手な人にとっては不快感のもとになる。

 一方で、歌を歌うなど楽しいことをして気を紛らわせると、酔い防止になるという。

 乗り物酔いの症状は、副交感神経が異常に興奮するために引き起こされるため、酔いを覚ます方法のひとつに、交感神経を刺激するというやり方もあるそうだ。唐辛子やショウガに含まれる成分には、酔いを覚ます効果があるという。石井さんの実験では「唐辛子を1本食べる」と実際に乗り物酔いが覚めたという。ただ、現実には試しにくい。「お子さんの場合は、アイスキューブ(氷)をなめると、口の中の交感神経が刺激されるので、乗り物酔いを防ぐ効果が期待できる。魔法瓶などに入れて持っていくとよいでしょう」と石井さんは話していた。

でんぐり返しやツボ押しバンド… 民間の言い伝えの効果は

 酔い止め予防のグッズとして、ツボ押しバンドなどを見たことがある人もいるだろう。ただ、こうしたバンドに乗り物酔いを防止する効果がないことが、米国の研究で指摘されている。

 また、スッキリしそうな梅干しやかんきつ系の飲食物なども、すでに乗り物酔いの症状が出始めているときには、口にするのを避けたほうがよいという。よけいに生つばが出たり胃が収縮したりして、吐き気を増強してしまう恐れがあるそうだ。

 一昔前は、でんぐり返しをすると酔いにくくなる訓練になる、とも言われたが、科学的な根拠はないという。「宇宙飛行士をいくら地上で訓練しても、やっぱり宇宙酔いは防げなかった」と石井さん。それよりも、酔い止め薬などを適切に使いながら、実際に乗り物に乗って、体を慣れさせたほうがよいという。船酔いについては、3日目以降から吐く人が減ったという報告もある。「その動きをたくさん経験して日常のことになれば、酔いはおこらなくなります。薬はどんどん使ってください。酔わなかったという体験を通して自信をつけていくことが大切です」と石井さんは話す。

市販の酔い止め薬の選び方

 酔い止め薬は、ドラッグストアなどでさまざまなものが売られている。選ぶ時には、どのような点に着目するとよいのだろう?

 薬剤師で、一般社団法人日本薬業研修センター・医薬研究所長の堀美智子さんによると、酔い止め薬には大きく二つのタイプがある。一つは、成分が腸で吸収されるもの。効き目が現れるまでに少し時間がかかるので、乗り物に乗る30分前くらいにのむ。液体や、カプセルなどの形状のものだ。もう一つは、成分が口の粘膜から吸収される物。かみ砕いたり、なめたりして服用する形状のもので、効き目が早く現れるのが特徴だ。製品のパッケージには「酔ってからでも効く」などと書いてあることが多い。

 どちらのタイプも、3歳から服用できるものが売られている。いちごやレモンなどの風味を付けてあるものもあるので、好みで選ぶとよいという。3歳未満の子どもは、そもそも乗り物酔いが起こりにくいとされているので、「3歳未満の子どもを対象にした酔い止めの市販薬はありません」と堀さん。

 酔い止め薬に含まれる主な成分は「抗ヒスタミン成分」だ。鼻水や花粉症の薬をイメージする人もいるかもしれないが、酔い止めに使われる抗ヒスタミン成分は花粉症の薬などとは異なる。「第一世代」と呼ばれるもので、眠くなるのが特徴だ。脳の興奮を鎮めて、酔いを起こしにくくするのだという。

 このほか、副交感神経の興奮を抑える成分や、頭痛を和らげたり薬による眠気を緩和したりする成分などを配合しているものもある。成分によっては子どもに使えない物もあり、対象の年齢は3歳から、5歳から、7歳から……など細かく区分されているので、よく見て選ぼう。

 堀さんは「乗り物酔いは、気持ちの問題も大きいので、お子さんの場合は事前に薬をのませて『のんだから大丈夫だよ』と親御さんが声をかけてあげることも、とても大切です」と話していた。

 

<アピタル:医療と健康のホント>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/honto/(鈴木彩子)