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 中学・高校で起きる事故の半分以上は運動部の部活動中で、年間35万件に上る。特に頭のけがは命にかかわることがあり、学校現場では重大事故を防ぐための模索が続いている。

硬球直撃 予防策を尽くしていたが

 死球を受けた2年生の男子部員(当時16)は声を上げ、尻から落ちて仰向けに倒れた。よけようとした球が、ヘルメットの耳当て部分と左耳の下に当たった。昨年11月18日、熊本県立熊本西高校(熊本市)で行われた野球部と他校の練習試合。部員らが駆け寄ると、意識がなかった。翌朝、亡くなった。

 野球部は事故防止に力を入れてきた。複数箇所で行う打撃練習は、打球が飛び交う。防球ネットの穴を抜けて投手に当たらないように37枚のネット1枚ずつに担当を割り当て、点検や補修を続ける。イレギュラーバウンドを防ぐため、ノックの合間にトンボをかける。ヘルメットは昨春、各部員に合うように三つのサイズを買いそろえた。

 それでも事故は起きた。横手文彦監督(43)は「亡くなった部員は野球が大好きだった。彼も、投手も、誰も悪くないのに……」と声を絞り出す。

 地元の軟式野球出身者ばかりの野球部は、昨秋の九州大会で8強入りし、今春の選抜の21世紀枠の県推薦校に選ばれていた。事故を受け、横手監督は辞退も考えた。

 そのチームに、遺族が葬儀で語りかけた。「前を向いてほしい。21世紀枠を辞退しないで、甲子園を目指して下さい」。頭を下げる相手校の投手にも「野球を続けて下さい。夏の藤崎台(球場)で投げる姿を楽しみにしています。本人も同じ思いでしょう」。参列者のすすり泣きが漏れた。

 野球部は今春の選抜に初出場した。ネット管理をまとめる3年の中本景土(けいと)君(17)は「大変だけど、練習に集中するためにも安全確認が大切」と話す。

子どもたち、守れますか 学校の死角
どんな時にどんな事故が起きやすいのか、小中高の学年ごとに分かる特設ページで考えます。

 事故後、スポーツ用品会社がヘルメットの両耳にあたる部分に、着脱式の金属板を付けて首や後頭部を守る試作品を持参した。まだ商品化の見通しはないが、横手監督は「事故をなくそうと動いてくれたことがありがたい」と話す。

 日本高校野球連盟によると、死球による死亡は記録が残る1974年以降で3件目。事故の直後、熊本県高野連の工木(くぎ)雄太郎理事長は日本高野連に伝えた。「硬球を扱う以上、どの学校でも起き得る。不慮の事故で終わらせてはいけない」。日本高野連は製品の安全性を管理する協会に事故の調査と予防策の検討を要請。協会は各ヘルメットメーカーと議論を始めた。

 全国の野球部で頭部事故は年間2千件超。打撃練習やノック時が目立つ。日本高野連の竹中雅彦事務局長は「防球ネットの点検やグラウンド整備などを徹底すれば、防げる事故が繰り返し起きている。指導者の知見を高める必要がある」と話す。

 日本高野連は01年、打撃投手のヘッドギア着用を義務化した。以来、打撃投手の死亡事故はない。16年には女子部員に甲子園大会前の甲子園での練習参加を認める一方で、ヘルメット着用を義務づけた。昨年3月には全国の高野連と野球部の指導者を大阪市に集め、事故防止のシンポジウムを初めて開催。専門家が事故事例や安全対策を説明した。防球ネットについては適切な補修方法や死角をなくす配置、事故が起きにくい新製品などを紹介。練習中の野手の顔を覆うフェースガードの着用も勧めた。その後、各地の高野連は安全対策に関する勉強会を開くなどしている。

部活中の死亡事故、10年間で152件

 日本スポーツ振興センター(JSC)の学校事故データを産業技術総合研究所(産総研)が分析。部活動の事故は2014~16年度、年間平均で35万件あった。小学校8千件、中学校18万7千件、高校15万6千件。部員数の多いバスケットボール、サッカー、野球の順。年間約1万2千件に上る頭のけがでは、野球、サッカー、バスケットボールの順になる。

 部活動の死亡事故は16年度までの10年間に152件。交通事故が大半の登下校中に次いで多い。亡くなった原因で最も多いのは、突然死を除くと頭のけが25件。柔道が突出し、ラグビー、野球と続く。ただ、柔道は12年度の中学での武道必修化に伴い安全対策が強化され、近年は大幅に減っている。

サッカー部の合宿中、ボールが頭に 練習を続け……

 東京都内の私立高校に通う男子…

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