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【まとめて読む】患者を生きる・食べる「再びおはぎを」

 食べることが大好きだった、広島県庄原市の滝口(たきぐち)タカヱさんは、86歳のときに転倒による骨折をきっかけに、全身の力が徐々に落ちていきました。やがて、口から食事をとることも難しくなり、最期のときが近づきます。そのとき、家族は何を望んだのでしょうか。

高齢の母、骨折し入院

 「あんたがすると、ちそう(小さく)なる」

 広島県庄原市の山あいに住む滝口智恵子(ちえこ)さん(66)は、義理の母タカヱさんからそう言われたことをいまもよく思い出す。

 2年前、91歳で亡くなった。おはぎが大好きで、お盆やお彼岸をはじめ、年に20回以上つくり、家族に振る舞った。

 コンビニで売っているおにぎりの2倍くらいの大きさだった。それを1度に20個くらいつくり、直径30センチのお皿に積み上げた。

 同居した智恵子さんもタカヱさんに教わってつくったが、サイズはふつう。タカヱさんは「あんたのはこまい(小さい)」と言いつつ、智恵子さんのおはぎを喜んだ。自分のは大きすぎて他人にあげるのは恥ずかしい。智恵子さんのなら、近所に配れる。

 1960年代半ば、自宅に小さな商店を開いた。しょうゆ、駄菓子、ティッシュ、洗剤……。ほしい商品を近所の人に聞き、棚に置いた。赤い公衆電話も備え、電話のない人に使ってもらった。

 客はそのまま店の長いすに腰かけ、おしゃべりした。タカヱさんは話に耳を傾けつつ、智恵子さんには「ここで聞いたことを、他人に話してはいけない」。智恵子さんは23歳で実母を交通事故で亡くした。お母さんと呼べるのは、タカヱさんだけだった。

 2011年10月、長男で智恵子さんの夫誠三(せいぞう)さん(67)が職場から昼食のため帰宅すると、タカヱさんが玄関付近で倒れていた。

 「脚が痛(いと)うて、立てられん」

 病院で調べると、転んだはずみで右ももの付け根近くの骨が折れていた。当時86歳。店を閉じてからもグラウンドゴルフなどをしてはいたが、体力は落ちていた。

 病院で急におむつをしたせいか、尿路から感染する腎盂(じんう)腎炎を起こした。すぐに手術ができず、リハビリを始めるにも時間がかかった。ベッド上で座れるまでに回復し、車いすに乗り外泊で帰宅できたのは年末だった。

 誠三さんに両脇を支えられ、歩行器を使い自宅内で歩く訓練をした。「よくなって早く退院したい」。誠三さんに、タカヱさんのそんな気持ちが伝わった。

■体力落ち、食事も…

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