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 皆さんは母子感染をご存じですか?

 お母さんが持っている細菌やウイルスなどの病原微生物が赤ちゃんの体に入ってしまうことを言います。もともと妊娠前からその微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。

 母子感染には、胎児のときに母体の中で感染する「胎内感染」、お産の通り道を通るときに感染する「産道感染」、赤ちゃんがおっぱいを飲むことで感染する「母乳感染」の三つがあります。

 母子感染を起こす主な微生物は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、梅毒トレポネーマ、エイズウイルス、成人T細胞白血病ウイルス1型、風疹ウイルス、性器クラミジア、B群溶血性レンサ球菌です。これらはすべて、妊婦健診の時に検査を行うことになっていますから、母子感染を防ぐ意味でも必ず妊婦健診は受けましょう。

感染力強い風疹ウイルス、胎盤を通って赤ちゃんに

 これらの中で特に怖いのは風疹です。妊娠20週までに妊婦が風疹ウイルスに感染すると、生まれてくる赤ちゃんに障害が残る「先天性風疹症候群」になることがあります。風疹ウイルスは胎盤を通って胎児に感染し、主に目の網膜、耳の神経、心臓で増えて、白内障や難聴、先天性の心臓の病気を起こします。

 風疹ウイルスの感染は、せきやくしゃみなどによって飛び散ったウイルスが口や鼻などから入ってしまうことによって起こります。その感染力は非常に強く、男性では職場での感染、女性は家族からの感染が最も多いのです。大人が風疹ウイルスに感染すると、発熱や発疹があらわれ、重症になると脳炎などの後遺症を残すこともあります。その一方で、「不顕性感染」といって症状が出ないことも多く、知らず知らずのうちに他人に感染させてしまう危険もあるのです。

感染しやすい30~50代男性、抗体検査やワクチン接種を

 感染を防ぐためにはワクチンが有効です。ただし、弱毒の風疹ウイルスを用いる風疹ワクチンは胎児へのウイルス感染の可能性を完全には否定できないため、妊婦自身が接種を受けることはできません。ですから、家族がワクチンを接種することで、ウイルスが家庭内に入り込むのをブロックする必要があります。

 特に30~50代の男性は風疹ウイルスに対する免疫(抗体)を持っている人が非常に少なく、感染しやすい状態にあります。そのため、女性も男性も妊娠を考えたらまず風疹ワクチンの接種を検討してください。そして、妊娠中の女性の家族は今すぐワクチン接種を検討してください。

 妊娠中の検査で風疹ウイルスに対する抗体が少ないと言われた妊婦さんは、赤ちゃんが生まれたら授乳中でもワクチン接種は可能ですので、次の妊娠時に感染しないためにもぜひワクチン接種を受けてください。

 風疹の予防接種を受けたかどうかについては母子手帳を確認したり、お母さんに確認したりしてみてもよいかもしれません。確認できない場合は、最寄りの医療機関で風疹抗体検査を受け、その結果抗体が少ない場合にはぜひワクチン接種を受けてください。それぞれ費用がかかりますが、青森県内のほとんどの市町村では風疹抗体検査およびワクチン接種に対して全額助成を行っています。自治体のホームページなどで確認するか、あるいは直接問い合わせをしてみてください。

 先天性風疹症候群は「防ぐことのできる感染症」です。生まれてくる赤ちゃんのために、家族そして社会全体で感染を防いでいきましょう。

<アピタル:弘前大企画・男性も必読! 産婦人科医が語る女性の一生>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座助教 松倉大輔)