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 戦争を知る世代から直接体験を聞く機会が少なくなっている。高齢となり、外出が難しいためだ。自宅にいながら講演してもらおうと、筑波海軍航空隊記念館(茨城県笠間市旭町)は、インターネット電話「スカイプ」を使う方法で、新たな試みを始めた。

 3月上旬、同館で催された講演会。会場の前方には、講師が座る椅子の代わりに、大きなスクリーンとノートパソコンがあった。

 「岡田さん、聞こえますか」。館長の金沢大介さん(48)がスカイプを通じて呼びかけると、兵庫県三木市の自宅にいる岡田良さん(92)の姿がスクリーンに映し出された。

 岡田さんは1943(昭和18)年、16歳のときに岩国海軍航空隊(山口県岩国市)に入隊した。谷田部海軍航空隊(つくば市)などで操縦訓練を重ね、戦闘機「紫電」の搭乗員に。フィリピンでの戦闘に参加した後、45年5月に筑波海軍航空隊に配属され、終戦を迎えた。

 岡田さんは「出撃したフィリピンの地で命がなくなると覚悟していた。内地に戻り、筑波山や霞ケ浦を目の当たりにして、ようやく生きていると実感した」と振り返った。「あのような戦争を経験しない世界になってほしい」とも話した。

 この日、講演を聞きにきた東京都豊島区の会社員、町田有也さん(29)は「元戦闘員の生の声が聞けるのは、本当に貴重な機会。文書で残っている記録もあるが、本人の話はやっぱり心に響いた」と話した。

 金沢さんによると、岡田さんは足が不自由で、自宅内でも歩行器が必要という。茨城まで招くのは難しいが、記憶はしっかりしているため、スカイプの利用を発案。「伝えたい思いがあっても、講演会場まで来ることがハードルになっていたが、ネットを使えば問題は解消できる」

 ただ、スカイプ講演の実現には、証言者の地元での協力が必須となる。今回は、記念館と協力関係を結ぶ兵庫県加西市の市民団体のスタッフ5人が、岡田さん宅に出向き、ネット回線をつなげるなどの準備を担った。講演自体もスタッフの問いかけに岡田さんが答えるかたちで進んだ。

 金沢さんは「今後、記憶の継承には、全国の戦争資料館や語り部の連携が必要になってくる。今回は実験的に行ったが、今後もどういうかたちで継承できるか考えたい」と話した。(益田暢子)