自らを鳥に例えて…日本の雑器に魅せられた英国人陶芸家

池田洋一郎
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 暮らしの中の美を追究した英国人陶芸家バーナード・リーチ(1887~1979)の没後40年を記念した「バーナード・リーチ展 山本為三郎(ためさぶろう)コレクションより」が、京都府大山崎町アサヒビール大山崎山荘美術館で開かれている。アサヒビール初代社長でリーチと深い親交を結んだ山本のコレクションを中心に皿や壺(つぼ)、絵画など約100点で、東洋と西洋の架け橋となった幅広い活動を紹介する。自らを象徴しているという鳥をモチーフにした作品も興味深い。

 香港に生まれたリーチは幼少期を京都など日本で過ごした。英国でエッチングを学んだ後、再来日して陶芸の道へ進む。日常の雑器に美を見いだす民芸運動を提唱した思想家・柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎、濱田庄司らとも交流を深めた。その後、英国セント・アイブスに窯を築いて拠点としたが、たびたび来日して京都や益子(ましこ)(栃木県)などの窯を訪れて作陶を続け、日英各地の伝統的技法を自らの作品に取り入れ、東西文化の融合を果たした。

 民芸運動を支援した山本とも家族ぐるみの付き合いを続け、多くのリーチ作品が山本の元に残された。

 「スリップウェアペリカン図大皿」は、自らの血をヒナに与える親鳥を描き、無償の愛を表す。器の素地にクリーム状の化粧土をかけ模様を描く技法「スリップウェア」が用いられている。18世紀の英国で盛んだったが、19世紀には廃れており、リーチが復活させた技法として知られる。

 「貼付文大注瓶(はりつけもんだいちゅうへい)」は、山本がリーチに設計を依頼し、大阪ロイヤルホテル=現・リーガロイヤルホテル(大阪)=に開設した「リーチバー」に飾られた品。「彫絵飛鳥文扁壺(ほりえひちょうもんへんこ)」に線彫で描かれた飛翔(ひしょう)する鳥は、日英を行き来する自らを象徴しているといい、他の多くの作品にも登場するモチーフだ。

 山本の娘に贈った帯留めや箸置き、薬味入れなど小物類にも細やかな文様が施され、味わいがある。画力の高さを示す焼き物の図案や風景の素描も並び、芸術家としての広がりを感じさせる。

 6月9日まで。月曜休館。一般900円など。美術館(075・957・3123)。(池田洋一郎)

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