[PR]

 瓦づくりの町として知られる愛知県高浜市。ここに、「鬼師」と呼ばれる女性職人がいる。伊達由尋(ゆひろ)さん(25)だ。地元の伝統的な技法を守り伝える若手の一人でもある。

 ひとかかえほどの太さの粘土の筒に、伊達さんが大きな字の書かれた和紙をあて、先端のとがったのみのような道具で字の縁をなぞる。終えると、金属のへらで字を彫り始めた。筒の厚さはおよそ3センチだ。

 粘土に対し、彫りが深ければ深いほど字がくっきりと美しく浮き出るのだという。だが画数の多い字はそこが難しい。くにがまえなどでは、あまり深く彫りすぎると中の字が抜け落ちてしまうからだ。時折、同じ部屋で作業をする母でやはり鬼師の映見さん(50)の意見も聞きながら、この日は1~2時間ほど彫った。

 鬼師とは、鬼瓦を作る職人のことだ。2017年12月、23歳で愛知県鬼瓦技能評価認定協議会の実技と学科試験の中級に合格した。

 実家は機械を使った瓦・鬼瓦製造販売会社「伊達屋」(高浜市)。高校卒業後、家業を手伝う傍ら、地元アイドルとしても活動した。だが1年後、瓦作りに専念したいと、アイドルはやめた。

 伊達さんが魅力を感じるのは、手作りの瓦だ。決まった形のものができる機械と違い、自分が思ったデザインを作ることができる。「他の人が見たとき、『いいね』と言ってもらえると聞いて、魅力を感じた」。本格的に技術を身につけようと、20歳の時に親戚の鬼師の元で1年間修業した。

 伊達さんが映見さんと作業をする部屋には、鬼瓦だけでなく、丸いフォルムのかわいらしいフクロウや猿の人形なども並ぶ。お土産として買ってもらえるよう、様々な作品を親子で試行錯誤して作っているのだ。

 家屋や生活様式の変化で、屋根瓦の需要は落ちている。ほかの若手鬼師と同様、伊達さんも新たな販路の拡大が必要だと考えている。クラウドファンディングで集めた資金で、早ければ7月にも会社の敷地内に鬼師の仕事を体験できる工房を開く予定だ。「瓦にもっと慣れ親しんで、知ってもらい、価値をわかってほしい」と伊達さんは話す。(大野晴香)

     ◇

 だて・ゆひろ 1993年、愛知県高浜市出身。小学生の時に両親が瓦・鬼瓦製造販売会社「伊達屋」を創業。子どもの頃からクラシックバレエに打ち込んだ。バレエで養われた、とことんやる性格は鬼師としての仕事にも生きている、という。