平成最後の日となった4月30日、天皇、皇后両陛下はどう過ごしたのか。天皇陛下は普段通りに皇居・御所で起床し、退位の礼を行うことを報告する祭祀(さいし)を午前10時から執り行うため、宮中三殿に向かった。

 朝から降り続いた雨はほぼやみ、辺りは明るくなっていた。

 「退位礼正殿(せいでん)の儀」の前に行う最後の祭祀。侍従らの介添えで「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」という天皇のみが着用する束帯に身を包み、午前10時2分、皇祖神とされる天照大神(あまてらすおおみかみ)をまつる賢所(かしこどころ)の回廊を厳粛な表情で進んだ。

 美智子さまは首などの持病のため、医師の判断で出席を控えた。祭祀を終えた陛下をお住まいの御所で迎え、お二人は夕方まで静かに過ごした。

 午後4時半過ぎ、陛下はモーニングに着替え、シルクのロングドレスの美智子さまと車で宮殿に向かった。退位にまつわる11の儀式の最後、退位礼正殿の儀に臨むためだ。

 午後5時、宮殿・松の間。儀式は厳かな雰囲気で始まった。「今日(こんにち)をもち、天皇としての務めを終えることになりました」。陛下はこう切り出し、最後の「おことば」を読み上げた。「令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」と述べて壇から降りると、後ろの美智子さまの手を取って支えた。

 常に支え合ってきたお二人。退室の際、前後して出口に向かう段取りだったが、陛下は再び振り返り、気遣うように美智子さまの姿を確認していた。

 式後、お二人は宮殿の各部屋をまわり、皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻、孫の愛子さまや悠仁さまからも相次いであいさつを受けた。宮殿での最後の行事は宮内庁と皇宮警察の職員からのあいさつ。午後6時45分ごろ、会場には700人超が集まり、陛下がこれまでの感謝を伝えた。退出の際は大きな拍手が起こり、陛下を支え続けた美智子さまが深々と一礼したという。

 お二人は午後7時過ぎにお住まいに戻り、側近らからあいさつを受け、30年3カ月余りの象徴の務めを終えた。(中田絢子