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 日ロ平和条約交渉で安倍政権が6月の大筋合意を断念した。事実上の2島返還に大きくかじを切って決着をはかったが、交渉は開始直後から暗礁に乗り上げた。安倍晋三首相はなぜ交渉に乗り出したのか。なぜ、計算通りに進まなかったのか。(石橋亮介、竹下由佳)

 「あらゆる前提条件なしに、年末までに平和条約を結ぼう。困難な問題はその後、友人として解決しようじゃないか」

 昨年9月12日、ロシア・ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの全体会合。プーチン大統領が突然言い出した提案が、それまでの日ロ交渉を一変させた。

 日本政府は北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのが基本方針だった。領土問題の解決を後回しにして平和条約を結ぶというプーチン氏の提案は受け入れられない。安倍晋三首相と何度も会談を重ねてきたプーチン氏。首相の考え方も理解しているはずだった。なぜこんな提案をしたのか。

 「プーチン提案」の引き金を引いたのは、同じ会合に出席していた首相だった。プーチン提案に先立ち、首相は演説。原稿は首相官邸幹部が書いたという。平和条約の締結についてプーチン氏にこう呼びかけていた。

 「今やらないで、いつやるのか」

 さらに、聴衆にもたたみかけた。

 「平和条約締結に向かう私たちの歩みをどうかご支援を頂きたい。力強い拍手を聴衆の皆さんに求めたい」

 会合はロシア全土に中継されていた。外務省幹部は「プーチン氏は何も言わずにはいられなかった」とみる。

 突然の「プーチン提案」について外務省は、平和条約の締結を優先するという従来のロシアの立場を繰り返しただけと、冷ややかだった。

 しかし、首相は違った。目をつけたのはプーチン氏が提案の中で「1956年の日ソ共同宣言は調印しただけでなく、日ソ双方が批准した」と語っていた点だ。宣言には平和条約の締結後、歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島を日本に引き渡すと明記されている。

 首相はプーチン氏との2人だけの会談で「両国が認めているのは56年宣言だけじゃないか。歯舞・色丹以外の名前はどこに書いているんだ」と繰り返し言われていた。首相は2島返還ならば合意できる可能性があると考えた。

 2日後の9月14日、自民党総…

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