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 1989年6月4日から30年。中国で「六四」と呼ばれる天安門事件は今も大きなタブーだ。もう民主化の希望は消えたのか。豊かになった中国の人々は「天安門」を忘れたのだろうか。

王丹さん 天安門事件当時の学生運動指導者

 当時我々が要求したのは小さなことでした。一つは政府との対話。もう一つは我々の行動を「動乱」と規定したことの撤回です。しかし彼らは発砲しました。共産党内にも改革派はいて、彼らを後押しできればよかったのですが、最高実力者のトウ小平がそれを望まなかった。トウ小平こそ独裁者であり、皇帝でした。

 民主政治は、民衆が決定権を持つのですが、中国の伝統文化では民衆は自身を国の主人だとは思っていません。いい皇帝か、悪い皇帝かを問うだけ。中国人がこう考えていては民主化はありえません。

 天安門事件は、この観念に変化をもたらしました。みんなトウ小平をいい皇帝だと思っていたのに、声を上げた途端、皇帝は悪者になりました。これで政府を信用できなくなり、我々には応えないのだとわかりました。国家と個人の間に溝が生まれたことは、いい変化です。それは流血という大きな犠牲を払わなければなりませんでしたが。

 無力感も広がりましたが、自分の利益を損なう事態になれば、やはり立ち上がります。政府から強引に立ち退きを求められると、抵抗します。わが身に降りかかる問題には積極的になっています。

 経済発展が中国の民主化をもたらすという期待が西側にはありましたが、それは中国を理解していない議論です。1980年代に民主化した韓国などと違い、中国は真の市場経済からほど遠いのが実情です。もちろん市場経済の素地はあるし、現在の雇用の大半は民間部門です。しかし国家の命脈を握る重要産業であるエネルギー、鉄道、電信、銀行などを政権はいっさい手放していない。これでは民主化の前提条件になりません。

 米中貿易戦争は、我々にとって役立つ面があります。世界貿易機関(WTO)のルールに合わせる、知的財産権の保護を徹底する。そうした圧力は、中国を市場経済へと改革し、ひいては民主化につながると考えるからです。

 米議会も研究機関も、ようやく目覚めた。中国の存在は米国への大きな挑戦であるとの認識で、党派を超えて一致している。彼らは中国共産党にきちんと対処すると決め、中国民主活動家の意見に耳を傾けるようになっています。

 「八九世代」は30年たって、立場も変わりました。しかしあの経験を決して忘れてはいません。心の奥底に共通したものを持っています。この世代はまだ50歳前後で、数百万人います。あと10年、15年経てば、八九世代が政治、経済、各分野で指導的地位につきます。私が通った北京大学の同級生の多くが党・政府機関にいます。彼らが権力を持てば、事件の名誉回復は必ずされるものと確信しています。そのときこそ、中国が変わる時です。(聞き手 機動特派員・村上太輝夫)

     ◇

 1969年北京生まれ。天安門事件で服役後、米国へ亡命。米ワシントンで研究所「対話中国」を主宰。邦訳著書に「中華人民共和国史十五講」。

川島真さん 東京大学教授

日本はどう向き合えばいいのか。中国ではどう受け止められているのか。後半に続きます。

 天安門事件が起きた背景には二つの要素があります。

 韓国、台湾などに見られるよう…

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