写真・図版

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 停車した列車からすこし距離を置き、闇に紛れ、青幇(チンパン)の車が何台か停(と)まっていた。列車の屋根にいるルイに向かい、ライトを点滅させて合図する。ルイは唇を嚙(か)み締めながらも、こっそりうなずいた。

 銃声を聞きつけてやってきた役人に、緑郎が事態を説明する。それから緑郎を先頭に屋根を歩き、個室に戻った。

 そこに別の役人がばたばたとやってきて、「便民票泥棒は、火夫(缶焚(かまた)き職員)に化けて乗りこんだようです。火夫が足りなくなりました。少佐の連れている外国人を一人貸していただきたく」と言った。

 芳子とルイとマリアが顔を見合わせる。正人が「ぼくが……」と手を挙げるが、却下される。

 ルイが行くことになり、むっつり出て行く。と、芳子も「兄(あん)ちゃん、おいらもつきあうぜ。夜風に当たるのも悪くない」と言いだし、連れ立って歩き去って行った。

 個室には緑郎と正人とマリアが残された。

 しばらくすると、緑郎も二人を置いて、寒々と凍える廊下に出た。

 冷えた壁に背を預け、「ふぅむ」と腕を組む。

「波乱含みの出発だな。だが失敗は許されない。ぼくは必ず成功させるぞ……」

 とつぶやく。

 顎(あご)を上げ、天井をぐっと睨(にら)みつけ、

「關東軍で出世し、三田村財閥の…

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