贖罪を天皇に委ねた政治 「平成も昭和も終わってない」

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編集委員・豊秀一
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 平成の天皇は何度も戦地を訪れ、「過去」を見つめてきた。政治の世界では歴史認識をあいまいにし、「未来志向」を強調する風潮が広がる。主権者である国民がいま、突きつけられているものは何だろうか。(編集委員・豊秀一

 ある元兵士が2014年4月8日、静かに息を引き取った。92歳。亡くなる2日前、病院へ見舞いに訪れためいの漆原静枝さん(61)にこう語ったという。

 「良心に誠実に生きてください」

 漆原さんは「一人ひとりがしっかりしなさい、とバトンを渡されたような気がした」と振り返る。

 元兵士は渡部良三さん。

 中央大学の学生だった渡部さんは学徒出陣で陸軍2等兵として1944年、中国・河北省の戦線に配属された。初年兵としての訓練中、生きた捕虜を銃剣で突き殺すように上官から命令されたが、キリスト教徒として拒んだ。上官の命令は、天皇の命令として絶対の時代。命令に背いた渡部さんは、昼夜の区別なく激しいリンチを受けた。

 戦後は国家公務員として働き、退職後、戦地などで詠んだ歌を集めた歌集「小さな抵抗」を出版した。そこに、こんな一首がある。

 〈天皇(すめらぎ)の赤子(…

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