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 若くしてがんを経験した同世代の人たちと悩みや経験を共有したい――。そんな思いから生まれた患者会「STAND UP!!」が設立10年を迎えた。病院などで配布するフリーペーパー(無料冊子)を発行したり、孤立しがちな若年患者のための交流の場を設けたり。首都圏在住の数人から始まった輪は、全国の約700人に広がっている。

 4月20日、東京都内の飲食店に20~40代の会員約40人が集まった。毎春、冊子の完成に合わせて集まるのが恒例だ。7月から代表になる、会社員で急性リンパ性白血病体験者の熊耳(くまがみ)宏介事務局長(36)が「要望や提案を聞かせてください。今後もみんなで作っていきましょう」と語りかけた。

 10代後半~30代の「AYA(アヤ)(思春期と若年)世代」と呼ばれるがん患者は、支援の不足が指摘され、国の指針「第3期がん対策推進基本計画」にも対策が盛り込まれている。2009年に発足し、この世代の悩みに取り組んできたのが「STAND UP!!」だ。

 呼びかけたのは副代表の鈴木美穂さん(35)。当時、日本テレビ記者の仕事を休んで乳がんを治療した直後だった。同世代の患者と悩みや気持ちを共有したいと考えた。同じ思いからSNSで若い患者の交流の場を作ろうとしていた、悪性リンパ腫経験者の松井基浩代表(32)に声をかけた。

 「乳がんの患者会に行ったら若い人でも40代。20代の私は『お母さんでなく、あなたなの。かわいそうに』『あなたに比べたら私は幸せ』などと言われた。同世代とつながりたいと考えていた」と鈴木さん。当時は医学生で、現在は小児科医の松井さんは「仲間が見つからず孤立している人が多いと痛感し、なんとかしたかった」と言う。

 10年春に冊子「STAND UP!!」1号を発刊した。2万5千部を刷り、病院に「無料なので冊子を置いてほしい」と電話で頼み込むなどして、約350の病院で置いてもらった。「若年性がん患者が作る!若年性がん患者のための情報マガジン」と銘打ち、「がん患者には『夢』がある」とサブタイトルを付けた。顔と名前を出せる患者探しにとりわけ苦労したという。

 翌夏に2号を出し、その後は毎年春の発行が定着した。内容は若くしてがんを経験した著名人のインタビューや座談会、当事者アンケートなど。テーマは「恋愛」「就職」「仕事」などだ。基本的に、顔や名前、病名は明示する。悩みや対処法を本音で語る内容に「病気になった後、初めて元気が出た」「前向きになれた」といった反響が届く。今は全国のがん診療拠点病院を中心に約400の病院で配布されている。編集長は会員が交代で担当してきた。

 冊子やメールマガジンを発行するだけでなく、東京や大阪、名古屋などで交流会を開く。学業や仕事、子育てに忙しい世代なので、打ち合わせはオンラインを活用するが、顔を合わせる機会も大事だと考えるからだ。

 新代表の熊耳さんは「同じ年代のがん患者と出会えていない人は今もいる。今後もつながる場を提供したい。大都市以外の患者との交流、他の団体との連携やメンバーの若返りも目指します」と話す。

 団体の入会金は千円で、会費は無料。入会希望や冊子のバックナンバーなどの情報はホームページ(http://standupdreams.com/別ウインドウで開きます)へ。(上野創)