[PR]

 トヨタ自動車が8日発表した2019年3月期決算は、経営の「底力」がにじみ出る結果となった。日本企業として初めて「売上高30兆円」を達成し、利益も堅実に稼いだ。海外のIT大手など新たな競争相手が増え、通商問題のリスクが顕在化する中、就任10年を迎える豊田章男社長は体力強化を急ぐ構えだ。

 「未来に向けてトヨタのフルモデルチェンジに取り組んだ1年。良くも悪くもトヨタの実力を映し出した決算だ」。豊田社長は記者会見で、この1年の決算を総括した。

 営業利益は前年比2・8%増の2兆4675億円。市場関係者から「強気」と受け止められた、1年前の当初予測(2兆3千億円)からさらに上乗せした。

 鋼材など原材料費の高騰が1700億円ほど利益を押し下げたが、生産や事務職場など現場のムダを徹底的になくす原価低減による増益効果は2500億円にのぼった。欧州でハイブリッド車、日本では新型クラウンなど、もうけの大きい車種がよく売れたことも奏功した。

 ただ、豊田社長は「トヨタらしさを取り戻す風土改革はまだまだ道半ば」とも発言し、気を引き締めた。09年6月に社長に就任してまもなく丸10年。トヨタを取り巻く環境は大きく変わりつつあるためだ。

 例えば北米市場は、最も多くの車を売る稼ぎ頭だったが、近年は利益水準の低迷が課題だ。車の値引きの原資として販売店にくばる「販売奨励金」の総額は前年より減ったものの、営業利益は5年前と比較すると2分の1以下。いまは4%ほどの営業利益率を21年ごろに8%まで高める目標を掲げるが、実現に向けたハードルは高い。

 ここ数年は、自動運転や電動化など新たな分野への投資の重要性も急速に高まっている。

 20年3月期の研究開発費は過去最高となる1兆1千億円を見込み、そのうちの4割ほどが新分野への投資という。ただ、競争相手は自動車メーカーだけでなく米グーグルなど海外の巨大IT企業にまで広がって、トヨタ単独で太刀打ちするのは難しい。

 そこでトヨタはこうした分野で他社との協業を進め、研究開発費の負担を分散させるとともに、自社の技術を普及させる姿勢を明確にしている。

 18年秋には移動サービス事業をめぐって、ソフトバンクとの提携を発表した。両者でつくった新会社には、ライバルであるホンダも参画を決めた。4月には、ハイブリッド車など電動車技術の特許を無償で開放し始めた。

 豊田社長は会見の場で、新しいキーワードとして「仲間づくり」を提示した。「従来のような資本の論理で傘下に収めるという考え方では、本当の仲間はつくれない。より幅広く、よりオープンに、より良い社会への貢献を追求することが新しいビジネスモデルにつながる」と強調。異業種や同業との協業については、これまで以上に拡大させる意向を示した。(初見翔)

   …

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら