一九二二(大正十一)年五月十五日生まれの私は、この五月十五日で満九十七歳になる。よく食べるし、よく眠るし、今でも、こんな仕事をしているのだから、まだ死にそうにもない。長生きが何より望ましい人間の幸福だったような時代は、とうの昔になくなって、今ではなかなか死ねない人生が、人間の老後の不幸を招いているように考えられている。
それでも長生きしたおかげで、私はさまざまなこの世の習わしを見たり、経験したりしたことで、得をしたように思う。
つい最近、御代替(みよがわ)りがあったが、私の幼時の記憶のなかで、最も華々しく晴れやかだったのが、御大典のお祝いだった。御大典が何だかよくわからないまま、大人たちがはしゃいでいるのにまきこまれて浮き浮きしていた。
私の生まれた徳島の町ではお盆…
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