首都圏の芸術ファンや歴史愛好家を呼び込め――。東京で記者会見を積極的に開いて、広く集客をねらう博物館や文化団体が九州で増えている。全国を視野に入れた九州からの情報発信戦略は、ますます加速中だ。
九州国立博物館(福岡県太宰府市)はこの夏、特別展「室町将軍――戦乱と美の足利十五代」(7月13日~9月1日)を開く。京都・等持院に伝わる13体の足利将軍像がずらりとそろう、「空前絶後の決定版」(九博)だ。
この夏のイチオシ企画、九州周辺のお客さんのみならず、東京に売り込んで首都圏のファンにも九州で見てもらおう。そんな思いを込めて2月末、九博は初の東京会見に打って出た。
会場は半蔵門近くにオープンした福岡県のアンテナレストラン。在京の新聞や雑誌など40人近くのメディア関係者が集まった。疾走感あるBGMが流れ、司会はフリーの女性アナウンサー。地元福岡で開かれるいつもの記者発表より、ぐっと華やかだ。
九博応援大使の歌手サラ・オレインさんも駆けつけ、歌声を披露。「九博のガラスに周囲の緑が映りこんで、まるでタイムスリップするような異世界。私は九博好いとうよ、魅力発信がんばるけんね!」とエールを送った。
「今までやらなかった方がおかしかった」。島谷弘幸館長は言う。「いくら良質の展覧会をしても、来てくれる人が少ないと残念だ。より多くの人々に九博の目玉を見てもらいたい」
九博は2005年にオープンした九州唯一の国立博物館として、全国レベルの独自企画を意欲的に展開してきた。が、人口が集中する首都圏から遠いため、その取り組みが全国に行き渡りづらいジレンマがある。
東京会見のターゲットは、全国レベルの宣伝力を持つ在京の雑誌やインターネットのウェブサイト。実際、会場には美術系や歴史系の大手雑誌、ネット上で様々な展覧会を紹介するサイトなどの関係者らが目立った。東京から情報発信してもらえれば地域を越えて知名度は上がり、全国から来訪者を期待できる。どうしてもローカルな媒体に限られがちな地元の記者会見に比べ、そのPR効果は絶大だ。
3月まで九博副館長を務めた…
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