会社の都合の転勤は原則なし――。そんな方針を打ち出す会社が登場した。動きは広がるのか。
AIG損害保険の大阪中央営業支店長、小林広知さん(54)は昨年7月、8年間の単身赴任生活を終え、妻と3人の子どもと一緒に暮らせるようになった。それまで、自宅に帰れるのは月に1回ほど。「受験などもあり、妻は大変だった」と振り返る。
同社は昨夏から、会社都合による転居を伴う転勤の原則廃止を試験的に開始。小林さんも手を挙げた。キャリアへの不安もあったが、「営業の上級職などのポストも増えており、この選択をしても出世できないわけではないとわかった」と話す。「子どもたちをリアルタイムで叱れる」という今を満喫しているという。
同社で営業や損害査定などを担当する「レギュラー社員」は、3~5年おきに全国200カ所の拠点間で転勤するのが通例だったが、数年前から「転勤は困る」という理由での退職が目立ち始めた。配偶者の転勤、育児、親の介護などで、転勤を前提とした働き方が難しいと感じる人が増えていたという。
4月から本格的に導入した新制度では、社員が勤務の希望エリアを選んだ上で、エリア内で勤務するか、それ以外で勤務する可能性がある職種かを選ぶ。
給与体系は同じだが、希望エ…