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 ロシア極東のカニ漁に新規参入を促し、水産業を発展させる。ロシア政府が掲げたそんな方針に、地元の水産業界が「政府の狙いは別にある」と猛反発している。うまみたっぷり、カニ利権の争奪戦だ。(ユジノサハリンスク=石橋亮介)

 プーチン大統領が1日、新しい法律に署名した。カニ漁のあり方を大きく変えるものだ。

 日本海やオホーツク海のタラバガニやズワイガニは、活ガニや冷凍加工品で日本や韓国に高く売れる。売上高の70%が利益ともいわれ、ロシアの漁獲量の9割以上が輸出されている。

 カニ漁をするには、海域ごとに水揚げ量の上限を定めた漁獲枠を取得する必要がある。これまでは過去の漁の実績をもとに既存の業者に優先的に割り振られ、ウラジオストクやサハリンなどの地元業者で占められてきた。

 新法は、この漁獲枠の半分で競争入札を導入するものだ。最高額を提示し、加工工場の建設などの投資を約束すれば、実績の有無を問わず参入を認める。法案が国会に提出されてわずか1カ月で成立し、夏にも初入札が行われる見通しだ。

 政府は「新規参入を促しカニ産業全体を発展させる」と説明する。競争を通じて船員の給料が上がる一方、カニの値段は下がり、市場が活性化する。また入札により「2019、20年だけで国に820億ルーブル(約1390億円)の追加収入が見込まれる」。政府の試算はいいことずくめだ。

 長年の秩序をひっくり返す入札制度の導入に地元は猛反発した。

 極東カニ漁業者協会のアレクサンドル・ドゥプリャコフ会長は「中小業者は入札で競争に勝てず、数千人が失業する。政府の試算には、産業が発展する根拠がない」。

 こうした批判は、政府が入札制度を導入する方針を示した昨夏から水産業界が繰り返してきた。地元企業が枠を失えば地域経済への影響は避けられないため、地元出身の国会議員らも反対してきた。

 にもかかわらず政府が新制度導入を急いだ理由として指摘されるのが、プーチン政権と太いパイプを持ち、カニ産業への本格参入を狙っているとされるモスクワの新興水産企業「ロシア漁業会社」の存在だ。

 この問題を取り上げた独立系有力紙や極東の地元メディアによると、同社の創業者らが2017年秋、プーチン氏宛てに送った書簡で入札の導入を求め、それが政府を動かしたのだという。

 報道によれば、同社の創業者の一人は、プーチン政権与党「統一ロシア」の中央執行委員長などを歴任した現モスクワ州知事の弟。もう一人は、父親が元運輸相で現在はロシア最大手の国営海運会社の社長、しかも妻の父はプーチン氏の友人で、資産が200億ドル(約2兆1900億円)を超える著名な投資家とされる。

 水産系ネットメディア「フィッシュ・カムチャツカ」のバフリン編集長は「政府の狙いは、この会社に市場を独占させ、カニ産業を支配することだ」と断じる。

■マフィアが…

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