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 今日は妊娠中に特有の病気である「妊娠高血圧症候群」と「妊娠糖尿病」についてお話ししたいと思います。

 妊娠すると体を流れる血液量は増え、心臓や血管の負担は増えていきます。また、おなかの赤ちゃんに栄養を送るため、血糖も上がりやすくなります。その変化に体がうまく対応できないと、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を発症することになります。

 妊娠中に「妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病ですよ」と言われたら、それは、「将来あなたは高血圧や糖尿病などの生活習慣病になりやすいですよ」という赤ちゃんからのメッセージなのです。ですから妊娠は『天が与えてくれた将来への負荷テスト』とも言われています。

 では、まず妊娠高血圧症候群についてお話ししましょう。

 妊娠高血圧症候群とは妊娠中に血圧が正常以上に上がってきた状態を言います。妊娠すると体を流れる血液量は増えますが、血液が流れやすいように血管も緩んでくるため、ふつう血圧は下がってきます。

 ところが、その変化がうまく起きずに血圧が上がってしまう妊婦さんが時々います。これは、胎盤がうまく作られないことに原因があると言われています。胎盤がうまく作られないと赤ちゃんに十分な栄養や酸素を送れません。そうすると、お母さんの体はそれを補おうとして一生懸命胎盤に血液を送ろうとします。それで血圧が上がってしまうのです。

 妊娠中に血圧が上がってしまうと様々な嫌なこと(合併症)が起こってきます。例えば、肝臓や腎臓の機能が悪くなったり、赤ちゃんが出る前に胎盤がはがれてしまったり、時には脳出血やけいれん発作(子癇(しかん))が起こって命に関わることさえもあります。

 赤ちゃんの方も、発育が遅れる胎児発育不全になったり、早産の状態で生まれたりすることも多くなります。治療としては、安静や食事管理をしますが、血圧が高すぎる場合には血圧を下げる薬を使うこともあります。赤ちゃんやお母さんの状態によっては、妊娠自体を終わらせないとダメなこともあります。

 では、どんな人が妊娠高血圧症候群になりやすいのでしょう。「初めてのお産」「35歳以上(特に40歳以上)」「肥満」「家族に高血圧症の人がいる」「前回も妊娠高血圧症候群だった」……などの妊婦さんでリスクが高いと言われています。少しでも早く妊娠高血圧症候群を見つけるため、妊婦健診では毎回必ず血圧測定や尿検査を行います。もし血圧が上がってきた場合にはかかりつけの先生に相談し、適切な治療を受けましょう。

 妊娠高血圧症候群になった人でも妊娠が終了すれば血圧は元に戻ることがほとんどです。とは言え、将来、高血圧、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)や生活習慣病になりやすいと言われていますので、お産が終わった後もずっと自分の健康には気をつけていきましょう。

 次に妊娠糖尿病についてお話しします。

 妊娠糖尿病というのは、糖尿病にまではなっていないけれど妊娠中に血糖が高くなってしまう状態を言います。妊娠中、お母さんの体は赤ちゃんに出来るだけ栄養をあげようとして血糖が上がりやすくなるのです。

 血糖が上がりすぎるとお母さんは大変ですので、上がり過ぎない仕組みもちゃんと体には備わっています。ただ、肥満の方、あるいは痩せていても血糖を下げる力が十分ではない人は血糖のバランスが崩れて妊娠糖尿病になってしまうのです。妊娠糖尿病になると、赤ちゃんが大きくなり過ぎて難産になったり、羊水が増え過ぎたりすることがあります。

 でもお母さんの方には目に見える症状は出て来ません。そこで、妊婦健診では妊娠の初めの頃と妊娠の半ばを過ぎた頃の2回、血糖をチェックして妊娠糖尿病の可能性がないかどうか調べます。そして、妊娠糖尿病が疑われる場合には精密検査を受けてもらいます。

 妊娠糖尿病と診断された場合、まずは食事療法を行います。それでも血糖が高い場合、血糖を下げるためのインスリン注射を行います。妊娠糖尿病の場合も、たとえインスリンを使用していたとしても妊娠終了とともに治ることがほとんどです。

 しかし、妊娠糖尿病になった女性は、将来糖尿病になる可能性がそうでない人に比べ7倍以上も高くなり、心筋梗塞や脳梗塞などになるリスクも上がることがわかっています。ですから妊娠後も定期的に検査を受け、自分の体を管理することがとっても大事なのです。

 私たちは、このように妊娠中に起こった出来事というのは「赤ちゃんからお母さんへの感謝のメッセージ!」と考えています。お母さんはついつい自分の体のことを後回しにしてしまいがちですが、ぜひ妊娠中のことを思い出して、年に1回は定期健診や人間ドックを受けるようにしましょう。

<アピタル:弘前大企画・男性も必読! 産婦人科医が語る女性の一生>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(むつ総合病院産婦人科産科部長 石原佳奈)