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 難治がんの一つ「スキルス胃がん」の患者会で理事長を務める轟浩美さん(57)。前理事長で夫の哲也さんを2016年に亡くしました。大切な人を失った悲しみへの支えも必要だと考え、患者会の中に遺族会をつくり、7月に発足会がありました。どんな思いを込め、どのような活動をしているのか、話を伺いました。

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 夫は13年の12月、スキルス胃がんと診断されました。その1年前から何度も胃の不調を訴えて胃カメラなどの検査も受けていたのに、見つかりませんでした。表面の粘膜の状態からは発見が難しく、治りにくいがんだと後になってわかりました。そんながんがあると知っていたら、違う行動をとっていたことでしょう。

 診断後、科学的根拠のない民間療法に走った時期もありました。私の気の済むように、と夫は私が勧めるニンジンジュースをしばらく飲んでくれました。でも「頼むから科学的なことを理解してくれ」と言われ、大学病院が主催する勉強会に参加するようになり、目が覚めました。わらをもつかむ思いだからこそ科学を読み取る力を付け、現実と向き合う必要性があると知りました。

 「知ることは力になる」と夫は旅立つ20日前まで、患者が正確な情報を知る重要性を伝えようと講演を続けました。今年は医師を招いた勉強会を大阪など全国10カ所で開きます。一人でも多くのがん患者が、あふれる情報に惑わないよう発信を続けたいと思います。

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 大切な人が亡くなり、遺族になると、治療を受けていた病院との関係は切れ、周囲から「いつまで悲しんでいるの」と言われることも。若い患者も多く、親を亡くした子どもに心配をかけたくないと弱音を吐けず、孤立してしまう配偶者もいます。

 その一方、闘病中は会に参加していたのに、遺族になると「告知されたばかりの人やこれから治療する人の不安につながってはいけない」と参加をためらう人も多いです。

 遺族会の主催で今月、聖路加国際病院のチャペルで故人をしのぶ「大切な人を思う会」を開きました。亡き夫が抗がん剤治療に通った病院で、私にとって特別な場所です。数年ぶりに遠方から顔を見せてくれた人、初参加の人もいました。一時でも、あふれる思いをとめることなく過ごすことができたと思います。

 スキルス胃がんは発見や治療が難しいため、現在の理事6人のうち、4人は遺族です。うち2人は妻を亡くし、悲しみを癒やす方法を学んだグリーフケア・アドバイザーです。この2人を中心に、安心して自分の気持ちに向き合える「よりどころ」をつくり、ずっと支え合っていきたいと思います。(月舘彩子)

◆略歴 轟浩美

 とどろき・ひろみ 1962年東京都生まれ。2016年、夫の哲也さんから引き継ぎ、スキルス胃がんの患者会「希望の会」理事長に。18年から厚生労働省がん対策推進協議会の委員。