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 英国の欧州連合(EU)離脱問題を機に、有能な人材や研究者が英国を離れる動きが広がっている。離脱問題の不透明さに加え、EU加盟国でなくなることで英国の魅力が落ちるというのが主な理由だ。英国は離脱後、単純労働者などの受け入れを制限する一方、高い専門性をもつ人々の受け入れを増やす方針だが、計画の実現はすでに危ぶまれている。

英国離れ始めた有能な外国人

 「ブレグジット(英国のEU離脱)の動きが、英国を離れる決断をした一つの理由に間違いなくなりました」

 中国人のレクシーさん(24)は2018年2月、5年間住んでいた英国を離れ、パリに引っ越した。英国では大学で経済学を学び、会計事務所で働くなどしたが、16年6月、国民投票でEU離脱が決まると、英国に住み続けることに疑問を感じるようになったという。「将来、労働許可が突然、もらえなくなるかもしれない。どうなるかわからないブレグジットに左右される状況が嫌になりました」。

 フランスを選んだのはEU加盟国であること、長年暮らした英国に近いこと、学びたかった観光学の修士課程のコースがパリの大学院にあったことからだ。周りには英国から移ってきた人が大勢いるという。「決断を全く後悔していませんし、今のところ、英国に戻る気はありません」と話す。

 マーケティングの専門家であるギリシャ人の男性(32)も、同様にブレグジットを機に英国を離れた。ロンドンの大学院で修士号を取った後、起業をするなどして英国にとどまっていたが1年ほど前、パリに移った。「離脱すれば、これまで同じEU市民として受けていた厚遇がなくなる。英国は今や、自分にとって素晴らしい場所ではなくなりました」。近年、ロンドンからパリに移るIT企業も少なくなく、パリのベンチャー業界が急激に活性化しているのを感じるという。

英国人も脱出

 この動きは、当の英国人の間にも広がっている。ポーランド系英国人の微生物学者エウェリナ・ワクニカさん(33)は、離脱決定後の物価上昇や不動産市場の低迷に加え、他のEU加盟国から有能な人材を確保できなくなった企業が増えたことを目の当たりにし、決断した。ポーランドにルーツを持つ一人として、国民投票のキャンペーンで「移民は仕事を奪う、福祉制度を悪用している、犯罪を増やす」などと盛んに言われたのも背中を押した。「EUはもちろん完璧ではない。でも、EU加盟国のどこでも教育を受ける自由、住む自由、移動する自由を与えてくれる。そのことで、私たちは視野を広げることができる」。今はフランスの食品関連企業で研究開発に携わっている。

 EU統計局(ユーロスタット)が3月に発表した調査で離脱決定翌年の17年、他のEU加盟国で市民権を得た英国人の数は、前年の2.2倍の1万4911人。28加盟国の中で最大の伸びを示した。

EUの基本理念嫌がった英国

 EUの基本理念は、加盟国間で人、物、サービス、資本の四つが自由に移動できることだ。EU市民であれば、原則、特別の査証(ビザ)なく、どの加盟国で住むことも働くことも制限を受けない。英国はこのうち、人の移動の自由、すなわち、移民が他のEU加盟国から自由に入ってくることを嫌がり、離脱決定につながった。

 英国のメイ首相は離脱の成果として、移民受け入れの厳格化を再三にわたって挙げている。英政府は離脱後、英国民の雇用に悪影響を与えるとして、特に建設作業員などの単純労働者を制限する意向を示している。その一方で、経済成長や競争力強化に大きく貢献するとして、起業家や科学者など、専門性の高い労働者の受け入れは拡大したい考えだ。

 だが、今年3月29日に予定していた離脱は、双方の市民の権利の扱いなどを定めた協定が、発効に必要な英議会の承認を得られず、延期に。離脱時期は最長10月末まで延ばされたが、先行きは不透明なままだ。こうした状況下で進む、労働者の英国離れの動きに産業界、教育業界は焦りを隠さない。

危機感強める大学、産業界

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