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 通商紛争をめぐる米中の摩擦が強まるなか、台湾の蔡英文(ツァイインウェン)総統が、中国に進出した製造業の回帰を呼びかけている。蔡氏は20日、世界にあふれる中国製品に代わり、「メイド・イン台湾を世界に発信しよう」と訴え、来年の総統選で再選すれば台湾で産業博覧会を開くと述べた。米中対立を台湾が中国依存から脱するチャンスと捉え、総統選の追い風にしようとしている。

 就任3周年の節目の20日、総統府で演説した蔡氏は「米中貿易戦争でメイド・イン・台湾が再び注目されている」と呼びかけた。

 これまで多くの台湾企業が中国に製造拠点を移し、中国から世界へ製品を輸出してきた。台湾に産業の空洞化をもたらしたこうした流れを止め、企業を引き戻すとのアピールだ。

 実際、台湾の経済部(経済省)によると、最近、電子部品メーカーなどから台湾に製造拠点の一部を戻したいといった相談が寄せられているという。同部は米中の対立の影響で、年間5千億台湾ドル(1兆8千億円)の投資が戻ってくると皮算用する。

 蔡氏が見据えるのは、来年1月の総統選だ。

 台湾には、中国に近付くか、距離を置くかという「自立と繁栄のジレンマ」がある。統一を迫る中国に、蔡氏や与党民進党は「台湾の自由を守る」と訴え抵抗してきたが、経済で中国に依存している現実が主張の弱さとなってきた。

 野党国民党は昨秋の統一地方選で、「蔡政権下で中台関係が悪化し、景気が悪化した」と訴え大勝した。シャープを傘下に置く鴻海(ホンハイ)精密工業の会長で、国民党からの出馬を目指す郭台銘氏は産業振興が政策の目玉だ。国民党の公認指名で郭氏のライバルになりそうな高雄市長の韓国瑜氏も、「中台関係を改善し、人的交流や物流を促す」と訴えている。

 これに対し、蔡氏は米中対立をテコに技術力のある企業を呼び戻し、台湾の産業の高度化を図る考えだ。

 蔡氏はこの日の会見で、「台湾は民主主義の価値と経済の自主独立を堅く守る」と訴えた。民進党の予備選では、台湾独立色の強い前行政院長の頼清徳氏が蔡氏をリードする。蔡氏としては、独立色に加えて経済重視の姿勢を強調し、頼氏と差別化を図る狙いもあるとみられる。(台北=西本秀