【動画】ステンレス板を加工した滑り止め部品「くつ底キャッチャー」=伊藤宏樹撮影
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 働く人たちの転倒や転落事故を防ぐアイデア商品は、製鉄の街で生まれた。滑り止め部品「くつ底キャッチャー」。ステンレス鋼材加工を手がける「伊藤」(山口県光市)が開発した。一歩間違えば重大な事故につながりかねない製鉄所や原子力発電所、潜水艦の階段やはしごに取り付けられ、活動する人たちの足元をひっそり守っている。

 厚生労働省によると、全国で起きる休業4日以上の労働災害の4割ほどが、転落や転倒に起因する。

 「摩耗しない階段の滑り止めを作れないか――。地元の製鉄所からの相談を形にしたのが、この商品なんです」

 専務の伊藤幸平さん(38)が、「くつ底キャッチャー」の説明をしてくれた。

 2009年、取引のある光市の新日本製鉄(当時)グループの工場内の安全管理担当から話があった。それまでの対策は、階段や通路の段差に表面が紙やすりのようにざらついた滑り止めテープを貼ること。すり減るたびに交換が必要で、飛散する鉄粉なども付着しやすく、作業員が滑って転倒する事故が相次いでいた。

 伊藤さんは当初、ステンレスパイプを薬味のネギのように細かく切断し、金属板に溶接して突起を作ろうと考えた。試作してみると効果は確認できたが、「切断や溶接に手間がかかって価格を抑えることが難しく、突起にごみがたまって管理の手間も必要だった」。

 そこで、ステンレス板にネジを通すための穴を開ける加工を施し、その際にできる突起部分が滑り止めにならないかと思い付いた。ステンレスはさびにくく、加工することで硬くなる特性もあった。すでに普及している加工技術を応用することで、コスト削減にもつながった。

 階段のへりの部分に突起が位置するよう、ステンレス板を直角に折り曲げ、上り下りする人の足に突起が必ず当たるようにした。11年に商品化にこぎ着け、製造・販売を本格化させた。

 既存の場所に、ネジとドライバーがあれば後から簡単に取り付けることが可能なのも強みだ。13~14年には、九州の原子力発電所に約5千枚を納入。今年3月に就役した海上自衛隊の潜水艦「しょうりゅう」のはしごにも採用された。「誰でも取り付けができるため、限られた人しか立ち入れない場所で使ってもらえた好例」と胸を張る。

 突起を作り出す工程は外注して…

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