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 児童虐待の防止強化に向けた児童福祉法等改正案の修正で与野党が合意し、今国会で成立することになった。児童相談所の体制強化のための項目などが追加された一方、野党が見直しを求めていた体罰禁止の表現などは政府案のままで決着した。虐待を防ぐ力を強めることはできるのか。

 「十分ではないが、かなりの前進が見えた」。与野党の実務者は23日、合意した修正内容を国会内で確認。立憲民主党の西村智奈美衆院議員は、そう記者団に強調した。修正案は24日の衆院厚生労働委員会で可決されて、衆院を来週通過する見通しだ。

 昨年3月、東京都目黒区で5歳女児が虐待後に死亡したとされる事件を受け、政府は改正案を今国会に提出する準備を進めた。今年1月には、千葉県野田市で10歳女児が死亡した事件も発生。与党は今国会での成立に向け、野党5党派が提出した対案と同時に審議し、修正協議にも応じた。

 修正で合意した約10項目は、いずれも野党案から取り込まれたものだ。22日の衆院厚労委では、国民民主党の岡本充功氏が「虐待の再発防止には、保護者が自ら変わることが重要だ」と指摘。野党案が、保護者への再発防止プログラム実施を児相などの義務とした意義を強調した。

 修正案では、「児童虐待の再発を防止するため、医学的または心理学的知見に基づく指導を行うよう努める」となった。義務から努力義務に後退した形だが、野党議員は「法律に盛り込まれれば、一歩踏み込んだ対応につながる」と期待する。

 児相の体制強化に向けた項目も追加された。野党は、政令で定められている「児相の管轄人口3万人に1人」といった児童福祉司の配置基準を、法律にも明記するべきだと主張。与党側は政令で十分だとして慎重な姿勢を崩さず、最終的には「児相の管轄区域の人口、児童虐待の相談に応じた件数などの条件を総合的に勘案」するとの表現で折り合った。児童福祉司の業務が過重にならないように、政令を見直すことも盛り込まれた。

 目黒区と野田市の事件では、子どもの転居時の児相間の引き継ぎが十分でなく、リスク評価が甘くなった。このため修正案には、児相が「移転の前後の指導、助言、必要な支援が切れ目なく行われるよう」に速やかな情報共有を徹底することも盛り込んだ。

 一方で、野党が主張していた中核市・特別区への児相設置の義務化は、自治体の理解を得られないとして見送られた。厚労省幹部は打ち明ける。「政府としても、受け入れやすい部分だけの修正だった」

体罰としつけ、様々な議論

 修正協議では、「体罰禁止」をどのような表現で法案に書き込むかや、民法上の「懲戒権」の見直し方も焦点の一つになった。民法に、親権者は子どもを「監護及び教育に必要な範囲内で懲戒できる」とする規定があるからだ。野田市の事件では、父親は虐待した理由を「しつけだった」と供述。東京都内の児相の職員は「虐待をする親が、しつけを理由に体罰を正当化することは多い」と話す。

 政府案は、体罰禁止を「民法の規定による(中略)範囲を超える行為により懲戒してはならない」などと規定。懲戒権のあり方は、改正後2年をめどに検討するとしていた。野党は「懲戒権の範囲内なら体罰は認められる余地が残る」と反発。懲戒権の規定の早急な削除を求めたが、与党側は「家族のあり方にかかわり、国民の間でも様々な議論がある」(安倍晋三首相)として修正に応じなかった。

 懲戒権の議論は、初めてではな…

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