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 茶の湯の歴史に唐物(からもの)は欠かせない。わびさびとは一線を画す舶来品のつややかさ。室町の大名や数寄(すき)者たちがあこがれた、海のかなたの中国陶磁器が、中之島香雪美術館(大阪市北区)の「茶席を彩る中国のやきもの」展で、ファンの来訪を待っている。

 茶入(ちゃいれ)に茶碗(ちゃわん)、香合、懐石や煎茶のうつわたち、ほとんど知られていなかった「初蔵出し」の逸品もある。たとえば、南宋・建窯(けんよう)の油滴天目(ゆてきてんもく)。偶然性が漆黒の天目釉(ゆう)に雨だれのような無数の銀色のしずくを生じさせた。わずかにくすんだうわぐすりの表面を埋める油滴の群れは、空から降り注ぐ粉雪にも見えてくる。

 目をこらすと、見込みに小さな粒が散らばっている。制作時に生じた気泡らしいが、見ようによっては星座の星々のよう。これもまた、この茶碗ならではの景色だ。

 対して、吉州窯(きっしゅうよう)の梅花天目(ばいかてんもく)の繊細なこと。いわゆるべっこうにも似た玳皮(たいひ)天目で、砂のような複雑な色合いに、等間隔に散らされた梅の花のデザインがチャーミングだ。

 明代の五彩などあざやかな色絵も中国陶磁の魅力のひとつ。●(さんずいに章)州窯(しょうしゅうよう)・呉州赤絵花鳥文皿(ごすあかえかちょうもんざら)の華やぎや景徳鎮窯(けいとくちんよう)・色絵団龍花卉文水指(いろえだんりゅうかきもんみずさし)の細やかさも見応えがある。もちろん、日本人好みの気品をたたえた龍泉窯(りゅうせんよう)青磁、目の覚めるようなブルーの幾何学文で一面を埋め尽くす祥瑞(しょんずい)の鉢もどうぞ。

 日本からの注文とされる古染付(こそめつけ)の鉢も独特な味わいだ。真っ青な呉須(ごす)で岩場を駆け回る鹿や馬がくっきり描かれ、余白には「大明嘉靖年」の文字。一方で浮世絵でもおなじみ、頂を三つのこぶで表現する富士山をかたどる造形はいかにも日本的で、いわば日中のハイブリッド、とでも言えようか。

 実感するのは中国陶磁たちの、バリエーションの豊かさ。この夏は、都の上流階級を魅了したやきものたちを堪能したい。

 8月4日まで。一般900円、高校・大学生500円、小・中学生200円。月曜休館。7月27日午後2時から出光美術館学芸員の徳留大輔さんが講演する。中之島香雪美術館(06・6210・3766)。(編集委員・中村俊介