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【アピタル+】患者を生きる・眠る「芋洗坂係長と無呼吸」(睡眠時無呼吸症候群)

 芋洗坂係長のキャラクターで知られる俳優の小浦一優さんは、R―1ぐらんぷりで準優勝してブレークする前年の2007年、睡眠時無呼吸症候群と診断されました。どんな病気で、予防法や治療法にはどんなものがあるのでしょうか。診断と治療の「ガイドライン」をまとめた、志木呼吸器科クリニック(埼玉県志木市)の赤柴恒人院長に聞きました。

 ――睡眠時無呼吸症候群とは?

 睡眠中に10秒以上呼吸が停止する「無呼吸」が、1時間当たり5回以上認められた場合を睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断します。睡眠中に舌根部が沈下して、のどがふさがって呼吸が止まります。そのたびに脳が覚醒し、大きないびきをかいて呼吸を再開させるため、何度も睡眠が中断されて日中に眠気や疲れを感じます。放置すると高血圧や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病につながります。

 ――睡眠呼吸障害研究会が2005年に診断と治療の「ガイドライン」をまとめまた経緯を教えてください。

 その2年前、約800人の客を乗せたJR山陽新幹線「ひかり」の運転士が居眠りをしたまま運転し、緊急停車していたことが発覚しました。この運転士が重症の睡眠時無呼吸症候群だとわかり、社会的な問題になりました。学会として警鐘を鳴らす意味も込め、急いでガイドラインを作りました。

病気に気づく三つのポイント

 ――どうすれば、自分の病気に気づきますか?

 日中に眠気があっても、「寝不足のためだろう」などと見過ごされがちです。1番の特徴は、いびきの大きさ。しかし、寝ている自分自身ではなかなか気づきません。家族や配偶者に指摘されるとか、たまたま職場の同僚と一緒に寝て気づかされることがきっかけになります。ただし、いびきだけなら必ずしも病気ではありません。睡眠時無呼吸症候群の場合は、このいびきが途中で突然、10秒も20秒も止まって無呼吸になります。1分を超えることも珍しくありません。これを一晩中、何度も繰り返すのが特徴です。

 ――2番目の特徴は?

 昼間の強い眠気です。強い眠気のために、日中も目を覚ましていられない症状を「過眠症」といいます。前述の山陽新幹線の運転士もそうでした。つまりこの病気は、自分自身だけでなく周囲への影響が大きいのです。心臓病や脳卒中などの致命的な病気につながるだけでなく、時として周りにも大きな迷惑や被害を与えます。

 3番目の特徴には、病気の原因でもある肥満があります。肥満体形は、睡眠時無呼吸症候群になりやすい。のどに脂肪や過剰な軟部組織が沈着しているため、空気の通り道が狭くなっています。この脂肪や軟部組織が睡眠中にのどを圧迫し、仰向けになって寝るとのどがふさがりやすいのです。

やせている人も注意

 ――やせていれば、この病気になりませんか?

 そんなことはありません。欧米人では、患者の9割以上が肥満です。しかし日本人を含めたアジアの人では、4人に1人が肥満の指標「ボディーマス指数」(BMI)が25未満の「普通体重」以下の人たちです。これはアジア人に特徴的な頭の形によるものです。顔が長く、あごが小さめで後方へ引っ込んでいるタイプは、仰向けになるとのどが狭くなりやすい。しかし自分で顔やのどの形を見ても判別できません。医師の適切な診断を受けてください。

治療で治る? 生活の中で注意することは

 ――睡眠時無呼吸症候群は、治療すれば治りますか?

 CPAPという医療器具を使えば、睡眠中の無呼吸状態は防げますが、あくまでも対症療法で、病気そのものを治すわけではありません。残念ながら基本的には、治療によって病気が治ることはありません。

写真・図版

 ただし、体重が100キロ以上あり、肥満のため睡眠時無呼吸症候群になっている人は、減量すれば治る可能性は高いでしょう。しかしこの減量がなかなか難しく、多くの人が挫折します。

 ――CPAPを使い続けるのが現実的ですね。

 有効性と安全性が明らかで、まず最初に行われるべき治療法はCPAPです。必ず医師の診断を受けながら、CPAPを使ってください。治療中は、少なくとも2~3カ月に1回、できれば毎月、通院してください。機械が送り込む空気圧などがきちんと体に合っているか、睡眠時のデータからチェックして調整します。健康状態も確認できますし、通院することで減量を続ける動機づけにもなるでしょう。

 CPAPが合わない人には、次善の策として、マウスピースがあります。寝るときにマウスピースをかむことで、下あごが前に出るようになり、のどがふさがれにくくなります。CPAPと比べると効果は落ちますが、軽症の人には有効です。医師とよく相談してください。

 飲酒は基本的にダメです。とくに寝酒は、絶対にやめてください。どうしても飲みたいときは、夕方に早めに飲んで、酔いをさましてから寝ましょう。アルコールには、上気道筋という筋肉の働きを弱める生理的な作用があります。お酒を飲むと上気道筋がゆるんでのどが狭くなり、呼吸が止まりやすくなります。くれぐれも注意してください。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・眠る>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・伊藤隆太郎)