[PR]

経済の「モヤモヤ」解説

「悪化」しているのに「回復」しているものって、な~んだ? 答えは「政府の景気判断」。5月に公表された景気動向指数と月例経済報告で、景気に対する見方が大きな食い違いを見せました。こんなちぐはぐが、どうして起きるのでしょう。

 政府は5月24日に公表した月例経済報告で、景気の現状について「輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」との認識を示した。米中貿易摩擦などに伴う中国経済の減速が国内に波及してきたことを踏まえ、2カ月ぶりに総括判断を引き下げた。

 ただ、下方修正の中身は微妙なもので、素人目にはわかりにくい。

 3、4月分は「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」としていた。5月分は「このところ」「一部に」を削除し、企業の生産の弱さが広がり、続いているとの認識に改めた。一方で、「緩やかに回復している」という基本的な見方は変えず、景気拡大は続いているとの認識を示した。

そもそも月例経済報告って?

 月例経済報告は、内閣府の担当者が毎月、個人消費や企業の設備投資、生産、景況感、輸出、雇用など、幅広い経済指標や情勢を分析してまとめる。関係閣僚や日銀総裁が出席する会議の了承を経て、政府の公式見解になる。景気に対する「総合的な判断」で、ほかの統計と異なり、裁量の余地があるのが特徴だ。

 基調判断では、微妙な語感を使い分けて景気の方向性を表現する。たとえば、「回復」は景気が良くなっている状態。「悪化」は悪くなっている状態で、「下ぶれ」は予想より良くなかった場合だ。「弱含んでいる」を「弱まっている」へ下方修正したり、今回のように「一部に」を外したりして、微調整をすることもしばしばある。

 判断のもとになる統計の数値によって、使う言葉を選ぶ、といった厳密なものではない。文章にあいまいでわかりにくい面があり、関係者の間では、「月例文学」とも評されてきた。

 「かっちりとした決まりがあるのかと思っていたが、実際にはけっこう適当だったのでビックリした」。月例経済報告の元担当者は、こう振り返る。

「緩やかに回復」は妥当?

 今回の月例経済報告は、昨年から使い続けてきた「緩やかに回復している」という表現が残るかどうかで、いつもにも増して注目されていた。

 というのも、その前週の13日に内閣府が公表した3月分の景気動向指数で、基調判断が6年2カ月ぶりに「悪化」に引き下げられていたからだ。

 景気動向指数は、工場などでの生産、家電や自動車など製品の出荷といった、景気に敏感に反応する九つの指標をまとめてはじき出す。基調判断は、指数の最近の動きを基準に当てはめ、機械的に出す仕組みだ。「改善」「足踏み」「(上方や下方への)局面変化」「下げ止まり」など5種類あり、「悪化」は最も厳しい状態を表している。

 さらに、20日に発表された1~3月期の国内総生産(GDP)1次速報も、景気の停滞を示す内容だった。実質成長率こそ、おおかたの予想を上回る年率2.1%の高い伸びとなったものの、内需の柱である個人消費や設備投資は微減に。また、輸入が輸出以上に大きく落ち込んだ結果、輸出から輸入を差し引いた外需が計算上、成長率を大きく押し上げた。輸入の急減は企業活動が鈍っている影響が大きいとみられ、見かけはプラス成長でも、実態は「内需の弱さの裏返し」だ。

 今回の月例経済報告は、こうした状況で発表されたため、「回復」を残したことをめぐり、民間のエコノミストらの評価は分かれている。「まだ景気後退とは言い切れない」と理解を示す声がある一方で、「『足踏み』などに判断を改めるのが順当だ」などと、政府の姿勢を疑問視する意見も目につく。

政府の説明は?

 月例経済報告の発表会見で、茂木敏充経済再生相は「内需を支えるファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている。緩やかに回復している基調は変わっていない」と、最近の言い回しを繰り返した。政府が強調するのは、高い水準を保つ雇用環境や企業収益だ。

 「『悪化』となった景気動向指数と表現の隔たりが大きいのでは?」と記者が質問すると、茂木氏は「一部の指標で見たもの(景気動向指数)と、全体の経済を見たもの(月例経済報告)は当然違ってくる。齟齬(そご)があるとは思っていない」と強調した。

 内閣府幹部も「景気動向指数は製造業の動きに偏っており、中国経済の減速を受けて影響が出やすい。一方で非製造業は元気なのに、景気全体を表していると受け止められてしまう」とこぼす。

政治への配慮はあるのか?

 客観的な指標が「悪化」を示し…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら