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 角界へ転身した元公務員が、念願の「関取」の座をつかんだ。7月の大相撲名古屋場所で、一山本(いちやまもと、25)=本名・山本大生(だいき)=の十両昇進が決まった。北海道福島町役場の元職員。23歳で安定した職をなげうって、一人前の力士とされる地位まではい上がった。

 「ようやくスタートラインに立った。素直にうれしい」。新十両が発表された29日、千葉県船橋市の二所ノ関部屋で師匠の二所ノ関親方(元大関若嶋津)とともに会見し喜びを語った。

 北海道岩内町出身。中大を卒業後に北海道へ戻り、2016年4月から福島町役場に就職した。職場は教育委員会。スーツ姿でパソコンに向かう一方、同町出身の横綱千代の山、千代の富士をたたえる記念館でスポーツ少年団に相撲を教え、町内の小学校などで競技の普及にも取り組んだ。

 転機は、16年9月に訪れる。日本相撲協会が新弟子検査の年齢制限を23歳未満から緩和。相撲や他競技で一定の実績があれば、25歳未満まで受けられるようになり、門戸が広がった。

 当時の年齢は、誕生日を迎える10月で23歳だった。中大4年の学生選手権、社会人時代の国体でともに16強だった一山本は「国体でふがいない相撲で負けて悔しかった。教えていた子どもたちが頑張る姿を見て、もう1回挑戦したいと思った。迷いはなかった」。

 プロへの夢を追い、その年の10月で退職。17年の初場所で新弟子検査に合格し、年齢制限緩和の新制度が適用された第1号力士となった。身長186センチのリーチを生かした突っ張りを武器に番付を上げ、東幕下3枚目で迎えた今夏場所を勝ち越し。前相撲から約2年半かけて十両になった。

 公務員時代と違い、十両以上の関取になるまで無給だ。「公務員をやめて入ったんだから」と発奮し、「両親も相当心配していたと思う。ようやく恩返しができた」。役場の元同僚からは無料通信アプリのラインで「おめでとう」と祝福されたという。昇進を決めた夏場所では、同学年の朝乃山が初優勝。オフには食事する仲で「早く追いつきたい」と刺激も受けた。

 体重126キロと力士では軽量だが、二所ノ関親方は「あと10キロくらい太れば三役も目指せる」と話す。しこ名は中大相撲部OBが「9画がいい」と助言し、本名に1文字足したのが由来。名古屋場所も変えずに土俵に上がる。「(来場所は)まずは勝ち越し。一番一番、しっかり自分の相撲をとっていきたい」。関取定着、幕内と高みを目指して相撲に磨きをかける。(甲斐弘史)