(おあがりやす)海の香 広がる懐かしい味
寺脇毅
鯛せんべい
丹後半島の最西部に位置する京都府京丹後市久美浜町。昭和の時代から、この地の名産として知られるのが「鯛(たい)せんべい」だ。製造元のひとつ、池市(いけいち)食品を訪ねた。
6代目の池内新太郎さん(45)が出迎えてくれた。今はこんにゃく製造が本業の同社では、回船業を営んでいた3代目が昭和初期に鯛せんべい作りを始めた。当時、町の中心部には魚市場があり、新鮮な魚が豊富に並んだ。残った魚を有効利用しようとすり身にした後、のばして焼いたのが始まりだという。魚市場は今はなく、材料の魚は近海の市場で仕入れている。
トビウオとクロダイを石臼で丁寧にすりつぶすのが、おいしさの決め手だという。1枚いただいた。パリッと気持ちの良い音が響く。しっかりかみ締めると、口の中いっぱいにふわっと海の香りが広がった。
「割ったせんべいに、おぼろ…