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 シンガポールで2日閉幕した「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」では、貿易摩擦などで対立を深める米国と中国に対し、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国などから自制を求める声が相次いだ。

 「米中は他の国とも協力し合い、世界秩序をひっくり返すのではなく、前進させていく必要がある」。5月31日、会議の開幕にあたって基調講演をしたシンガポールのリー・シェンロン首相はこう訴えた。

 いまの米中対立は貿易摩擦が中心だが、米中が火花を散らす南シナ海と接する東南アジア諸国は、安全保障分野でも対立が先鋭化する懸念を抱いている。

 2日、中国国防相が米国を強く牽制(けんせい)する演説をした後の全体会議では、ベトナムとフィリピンの国防相が、米中対立がエスカレートすれば「戦争が起きる可能性がある」と発言。大国の対立で、地域の安定が揺さぶられることへの危機感をにじませた。

 米国への不満も根強い。シャナハン米国防長官代行は1日の演説で新たなインド太平洋戦略を説明する中で、地域の国々に応分の負担として国防費の増額を求めた。ベトナムのグエン・チー・ビン国防次官は取材に「軍備競争には加わらないし、地域の平和的な環境に有害なこともしない」と述べた。別の国の国防省幹部も「従うつもりはないし、ほかに従う国はほぼないだろう」と不快感をにじませた。

 米中の関係改善を積極的に訴えるべきだとの声も上がる。マレーシアのリウ・チントン防衛副大臣は「ASEANは米中に、互いに配慮して状況を打開する新たな道を考えるよう伝えなければならない」と話す。ASEAN元事務局長のオン・ケンヨン氏は「両大国の争いで我々の経済も悪影響を被る可能性がある。ASEANとしてどう対応するのか、真剣に議論しなければならない」と話した。(シンガポール=野上英文、守真弓)