拡大する写真・図版 イタリアのベネチアで2日、制御を失った大型クルーズ船が、停泊していた観光船(中央)に衝突した=AP

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 「水の都」で知られ、街全体が世界遺産となっているイタリア・ベネチアで2日、大型クルーズ船が観光船と衝突した。ANSA通信によると、観光船に乗っていた米国人観光客ら少なくとも4人が軽いけがをした。

 潟の上に造られたベネチアではサンマルコ広場など、歴史地区である市中心部のすぐ脇まで大型クルーズ船が入ることが環境破壊につながっているとして、批判の声が上がっていた。今回の事故を受けて、入域を制限する議論が再燃しそうだ。

 大型クルーズ船は総トン数約6万5千トンで、全長約275メートル。現地メディアが報じた映像には、大型クルーズ船が警笛を鳴らしながら岸壁に近づき、観光船と岸壁の間に割り込むようにぶつかる様子が記録されている。クルーズ船会社「MSC」は原因を「調査中」としているが、エンジンが故障してコントロールを失ったとみられる。

 「ベネチアとその潟」は、1987年に世界遺産に登録された。大型船が入ることで潟の浸食が進み、地盤沈下の原因になっていると指摘されている。多数の観光客が押し寄せることによる環境破壊も懸念されており、世界遺産委員会は「危機遺産」とすることも検討している。

 ベネチア市は観光収入で潤う半面、「これ以上、観光客が増えると環境が破壊され、街が持続できなくなる」と危機感を募らせる。ブルニャーノ市長は「大型クルーズ船がもう通るべきではないというのは明らかで、この8年間言い続けてきたことだ」とコメント。ボニゾーリ文化財相も「大型クルーズ船の封鎖に向け、関係機関と調整中だ。世界遺産以上に、環境と市民の安全を守る必要がある」と述べた。(ローマ=河原田慎一)