[PR]

経済インサイド

 宇宙関連などの先端研究所が並ぶ茨城県つくば市。その一角に、「チオビタドリンク」や「ソルマック」で知られる大鵬薬品工業(本社・東京)の研究所がある。取り組んでいるのは、有望な新薬の「タネ」の研究だ。

 「タネ」とは新薬の元になる有効成分のこと。大鵬薬品では、土から採れた様々な菌やカビを試験管で培養し、その中からタネを探している。こうした薬づくりは「天然物創薬」と呼ばれる。

 研究員は全国各地を回り、微量の土を採ってくる。メンバーを束ねる大津嘉弘さん(51)は「四季がある日本では、多様な自然環境でいろんな生物が育つ。人知では計り知れない能力を持つ微生物もおり、新薬開発の可能性は大きい」と話す。

自然の恵みが豊富な日本。様々な薬のもとになる「タネ」はその自然界の土や海水などから生み出されます。日本の製薬会社は様々な「タネ」から新薬を生み出し、大きく成長してきました。しかし、自然から薬を生み出す手法は急速に衰退しています。巨大メーカーが世界の製薬業界を席巻する中、伝統的な手法は生き残れるのでしょうか。

かつては隆盛だったが…

 天然物創薬は、昔ながらの創薬手法だ。英国のアレクサンダー・フレミング博士が1928年に発見した世界初の抗生物質「ペニシリン」が起源とされる。菌の培養では、和食に欠かせない「みそ」や「しょうゆ」づくりに使う発酵の技術が求められるため、日本の「お家芸」と言われた。大村智・北里大特別栄誉教授は天然物創薬の研究が評価され、2015年にノーベル医学生理学賞を受賞している。

 大鵬薬品の研究所では、数人のメンバーが年に4、5回、鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島連山や北海道の洞爺湖付近に出向き、微量の土を採ってくる。

 地図検索サービス「グーグルマップ」などで各地の森林の生育状況を確認し、以前に土を採取した山などと異なる自然環境の地域を選んで出かけるという。土はポリ袋に入れ、菌やカビが弱らないようクーラーボックスに収納。研究所に持って帰るとすぐ、培養に取りかかる。

 豊かな自然に恵まれた日本ではかつて、天然物創薬が盛んで、製薬業界を大きく成長させた。それが今では「傍流」に追いやられてしまっている。

 もともと天然物創薬は、いろん…

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら