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 長崎県平戸市が、市の代表的な観光名所である平戸城のやぐらを宿泊施設に改装する計画を進めている。日本城郭協会(東京)によると、実現すれば国内の城では初めて。市は「泊まれる城」をPRして、観光客誘致に弾みをつけることを狙う。

 改装するのは平戸城に五つあるやぐらのひとつ、懐柔櫓(かいじゅうやぐら)。1977年築の鉄筋コンクリート(RC)造り、2階建てで、延べ床面積127平方メートル。九州本土と平戸島を結ぶ平戸大橋の眺望が楽しめる位置にある。元々は展示スペースだったが、現在は倉庫として使われている。

 公募で選んだ運営事業者のアイデアをもとに、やぐらの内部を市が工事する。外観は変えないことを条件にやぐら1棟を貸し出して経営してもらい、市は貸出料を受け取る仕組みだ。2社から応募があり、8日のプレゼンを経て事業者を絞り込む。

 平戸城は、明治期の廃城令で取り壊された。市民の間に城の再建を望む声が高まり、62年、天守と乾(いぬい)、地蔵坂、見奏(けんそう)の三つのやぐらが鉄筋コンクリートで造られ、その後、懐柔櫓なども再建された。

 日本城郭協会によると、江戸時代の軍学者、山鹿素行(やまがそこう)を祖とする兵学に基づいて郭(くるわ)や堀などが配置されている数少ない城で、2006年には同協会の「日本100名城」に選ばれている。

 主な施設が、建設から半世紀以上経過して老朽化していることから、市は昨年度から3年がかりで長寿命化を図る大規模改修に着手。有料の展示スペースがある天守は、今年10月ごろから約1年半の間、閉鎖して工事する予定だ。

 懐柔櫓は、長寿命化と併せて宿泊施設化の工事を進め、来年夏ごろの宿泊客受け入れ開始を目指す。東京五輪で増加が予想される外国人観光客を呼び込むことを念頭に置く。今年度予算に、調査費や工事費約1億4千万円を盛り込んだ。

 平戸城の年間入場者数は最盛期に約20万人あったが、近年は約7万人にとどまっており、維持費が市財政の負担となっていた。やぐらの宿泊施設化は、建物の活用に制限がかかる文化財ではないことを逆手にとった策だ。国内外に「泊まれる城」をPRして市や平戸城の注目度を高め、入場者数を再び上向かせようとの狙いがある。

 宿泊のニーズを裏付けるデータもある。市が17年、民泊提供会社と提携して、平戸城天守に無料で1泊する男女ペア1組を募集したところ、国内外から約7400組の応募があった。うち5割強が海外からだった。市観光課の藤田法恵(のりえ)課長は「日本の城で、ほかに泊まれるところはない。しかもここは、100名城のひとつ。『平戸に行ってみたい』と多くの人に思ってほしい」と期待を寄せる。

 お城泊の料金は、市内既存ホテルと競合しない額に設定してもらう方針だ。黒田成彦市長は「平戸のシンボルで市民の誇りである平戸城に、世界の方々を呼び込みたい」と意気込む。(福岡泰雄)