写真・図版
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 夜もとっぷり暮れたころ、調査隊一同は成都に辿(たど)り着いた。

 深い緑の広がる風光明媚(めいび)な古都。家々も古路も灰色の石でできていた。背の高い街路樹が冬の風に揺れていた。川からの水音が響き、月光が夢のように青白く降り落ちてきた。

 水汲(く)みをしたり、古路に出した机で麻雀(マージャン)に興じたりする町民に混じって、軍服姿の国民党兵士、黒い毛皮を羽織ったロシア人商人、鬚(ひげ)モジャの顎(あご)をして機関銃を背負った軍閥集団なども、我が物顔で闊歩(かっぽ)していた。

 緑郎は難民を装ってゆっくり歩きながら、

「この町まではまだ戦争がきてないな。政治的にも様々な勢力が共存している……」

 と低くつぶやいた。

 その隣で、マリアがふと足を止めた。正人に「どうしましたか」と聞かれ、民家の庭を指差(ゆびさ)して、

「ミフクラギの木です。樹液は猛毒で、殺鼠(さっそ)剤に使われるんですよ」

「へぇ! ごく普通の木に見えるのに、こわいな」

 マリアは「ええ」とうなずき、…

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