写真・図版

[PR]

 ハミでの燃料補給の間、一同はまた飛行機の外に出て束(つか)の間の休息をとった。

 芳子は、わずかな時間差で同じ飛行場に着いた小型飛行機に気づき、「む、何やら気になるぞ」と眉をひそめた。そっと忍び寄り、「どこの便だ。貨物を運んでるってわけでも……」と窓越しに覗(のぞ)こうとしたとき。

 とつぜん飛行機の扉が開き、がっちりと大柄で、大きな目と高い鷲鼻(わしばな)をした東洋人の老人が姿を現した。

 芳子は老人の顔を見上げるなり、「な、南無三!」と顔色を変えた。おろおろと無様に、

「おいらは……ただの、ゴロツキでして……」

 老人はゆっくりと首を曲げ、芳子を見下ろした。

 懐から拳銃を取りだし、芳子の青白い額にピタリと銃口をつける。腹の底に響くような不吉な声で、

「そうだな、愛新覺羅顯王子(王偏に子)(あいしんかくらけんし)よ。清王朝の復活という大いなる夢をなくしてからの貴殿は、ただのゴロツキにちがいあるまい」

「は、はひ……」

「ここでわしを見たことを誰にも口外するでないぞ。娘婿の間久部少佐にもだ。黙っていれば命だけは助けてやろう」

「も、もちろんです。旦那……」

 芳子は震えながらうなずいた。そしてギクシャクとした歩き方で老人が乗る飛行機から離れていった。

 青白い横顔に、冬の風が凍えて吹きつけた。

 ようやく安全と思えるだけ離れ…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら