写真・図版

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「な、なんの都だって? 年を取らない?」

 マリアは淡々と通訳し続ける。

「はい少佐。湖畔に楼蘭という国があり、民は何百年も年を取らなかった、と言っています」

「なに? 楼蘭は十六世紀初めに滅びたはずだ! どういうことだ?」

 と緑郎が目をぎらつかせた。

 そのとき湖からふわっと風が吹き、マリアのスカーフを空に飛ばした。正人が追いかけ、拾ってやる。

 露(あら)わになったマリアの顔を見るなり、ウイグル族の男が甲高い声をあげた。湖を指差し、つぎにマリアを指差し、叫んでいる。「な、なんと言ってる!」と緑郎が聞くが、マリアはスカーフを巻き直しながら「さぁ? 聞き取れません。なんでしょうか」と首を振った。

 男はマリアを気にして何度も振り返りながら、やがてロバとともに遠ざかっていった。

 

 

 日が暮れるギリギリまで、調査隊は湖の周りを歩いて調べ回った。だがごく普通の植物が少し生えているだけで、伝説の鳥どころかネズミ一匹みつからない。

 反対側の湖畔に楼蘭らしき廃墟(はいきょ)群があった。土色の日干しレンガで作られた四角い建築物が並んでいる。家も広場も道路も砂混じりの風にさらされ、半ば埋まっていた。数年前まで人が住んでいたとは思えないほど荒れ放題だった。

 日が翳(かげ)り、砂漠の夜がまた近づいてくる。

 緑郎はテントに潜りこみ、眠っ…

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