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【アピタル+】患者を生きる・眠る「ナルコレプシー」

 時間や場所に関係なく、自分自身ではどうすることもできない眠気がやってくる。それが何カ月も続く。ナルコレプシーの主な症状です。珍しい病気で、寝るという症状から、ともすれば「なまけている」「不真面目」と思われがちですが、実際はそうではありません。どんな病気で、どんな治療法があるのか。国立精神・神経医療研究センター病院の臨床検査部睡眠障害検査室医長の松井健太郎さんに聞きました。

 ――どんな病気でしょうか。

 日中に自分ではコントロールできない強い眠気がやってきて、寝落ちしてしまいます。仕事をしている間にそうなる人もいます。典型的な方だと、眠気以外にもいろいろな症状があります。例えば、寝入り際に金縛りになったり、夢と現実が混ざったような夢を見たり。夜間の睡眠がぶつぶつに途切れ、ぐっすり眠れない人もいます。連続して2、3時間しか寝られないため、睡眠の質も悪くなります。

 ――他にどんな症状がありますか。

 「情動脱力発作」といい、大笑いしたり驚いたり、すごく怒ったり、というように気持ちが高まったときに力が抜けてしまう症状があります。ろれつがまわらないようなケースから、ひざから崩れ落ちて倒れてしまう人もいます。ただ、1分ほどで戻ります。

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 ――ナルコレプシーの原因は。

 「オレキシン」という物質が関係しています。患者さんの髄液中のオレキシンを調べると、その濃度が非常に少なかったり、測定できないほどだったりします。覚醒を維持するために働いている「オレキシン」がないため、突然眠ってしまうのです。

 ――睡眠リズムが崩れているとも聞きました。

 MSLTという検査をするとわかるのですが、ナルコレプシーの人は寝入る際に、体は眠っているものの脳は活動している「レム睡眠」が起こります。睡眠は通常、ノンレム睡眠とレム睡眠があり、この二つが交互にやってきます。個人差はありますが、おおよそ1.5時間ごとなので、通常は1晩に4、5サイクルです。ノンレム睡眠は、いわば脳が休んでいる睡眠です。ところがレム睡眠では脳が活発に活動している一方、体は深く寝ていて動かすことはできない。このため入眠時幻覚や金縛りがおきやすくなります。

 ――治療法は。

 目をさます薬をのみます。リタリン、ベタナミン、モディオダールという薬があります。リタリンは切れ味はいいですが、比較的効果が短く、1日3回のんでいる人もいます。ただ、処方できる医師は登録制になっています。現在のファーストチョイスはモディオダールです。依存性をつくりにくい一方、値段は高めです。根本的に治す方法はまだありません。また、情動脱力発作の薬もあります。

 ――ナルコレプシーは一般的に知られているでしょうか。

 珍しい病気なのであまり知られていません。患者さんの割合は、日本では600人に1人程度と言われています。眠くなる病気ですが、睡眠が分断しやすいので不眠という側面もあります。「よく寝る」と思われているかもしれませんが、夜はぐっすり眠れなくて、睡眠薬を併用している人もいます。外見ではわからなく、「なまけている」と思われてしまうのがつらいところです。

 ――まわりはどう接すれば。

 職場環境にもよりますが、昼寝をさせてあげてください。10分ほど眠るだけでも、だいぶすっきりします。

 ――病気になりやすい年齢はあるのでしょうか。

 早い人は小学生からで、多くは中学生くらいに発症します。内科だとわからないこともあるので、睡眠障害を専門とする病院で診てもらってください。

 

 ◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・眠る>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・戸田政考)