豪警察、公共放送を家宅捜索 殺害事件の機密情報めぐり
オーストラリア連邦警察は5日、アフガニスタンに派遣された豪兵士の民間人殺害事件に関わる機密文書漏洩(ろうえい)の捜査として、事件を報じた豪公共放送ABCのシドニー本部を家宅捜索した。警察は4日にも、別の機密情報の報道をめぐって新聞社記者の自宅を捜索。警察は報道した記者を刑事訴追する可能性も否定しておらず、国内では「報道の自由を脅かす」と懸念の声が上がっている。
ABCは2017年7月、09~13年にアフガンに派遣された豪特殊部隊が非武装の男性や子どもを殺害する事件が10件あった、と入手した機密文書の内容をもとに報道した。
今回の捜索はこれに関わるもので、警察は「機密情報の公表を禁じる刑法の規定に基づいて捜索した」と発表。6日に記者会見した警察幹部は機密情報をもとに報じた記者も訴追されるのかを問われ、「まだ決めていない」と述べた。ABCによると、ABCの電子メールシステムに残る、この報道に関わる原稿や映像素材など数千点が捜索の対象になった。
警察は4日には、大手新聞社ニューズコープの記者のキャンベラの自宅を家宅捜索。記者は昨年4月、政府が情報機関による市民への監視活動を強めることを検討していると、機密情報をもとに報じていた。
相次ぐ捜索に、メディア業界の労働組合豪州メディア娯楽芸術同盟(MEAA)は5日、声明で「真実を報じるためにある記者と報道機関を脅かす。真実が政府を困惑させたとき、警察がドアをノックするようなものだ」と批判した。ABCは「今後も、国家の安全保障や情報機関に関わる事柄で公共の利益があると判断したときは、恐れずに報道する」としている。(小暮哲夫)
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