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 イスラム教徒が日中の飲食を断つラマダン(断食月)が6月初旬に終わった。ラマダンや「断食」というと、つらいイメージを持たれがちだが、ラマダンでしか経験できないこともある。日没後の食事を家族や友人らとともにし、夜の街はにぎわう。日本で言えば正月とお盆を合わせたような雰囲気さえあると感じた。支局があるドバイでは、意外な催しもある。私がこれまでに経験したラマダンを紹介したい。

 断食は、イスラム教徒が果たすべき巡礼や喜捨など五行のうちの一つ。日の出から日没までの間、約1カ月間にわたり飲食ができず、たばこを吸うことも許されない。ただ、子どもや高齢者、妊婦などは免除される。

 イスラム教徒にとってラマダンは特別な時間であると同時に、貧しい人たちを思いやる気持ちを育み、神の恵みに感謝するときでもある。

「あなたも食べて」

 ラマダン中の楽しみと言えば、「イフタール」と呼ばれる日没後の食事だ。家族や親戚、友人が集まって盛大に食卓を囲む。

 2016年6月、エジプトの首都カイロ。日没が近づくと歩道や空き地にテーブルやいすが並べられていた。次から次へと人がやってきて、席に着く。当時カイロに留学していた私が不思議そうに眺めていると、手招きされた。「あなたも食べていきなさい」。

 エジプトでは「マーイダッテルラハマン」と呼ばれ、慈善団体や地域のビジネスマンが無料で振る舞う。帰宅が間に合わない人や近くの商店で働く人、タクシーの運転手らが寄っていくのだという。

 席に着くと、米と鶏肉、ジャガイモ入りトマトスープなど、意外と豪華な食事が一人ずつに運ばれてきた。皆、一言も発せずにじっと待つ。でも、イフタールの時間が近づいてくると、「俺のところにチキンがない!」「こっちはスープが足りないぞ!」などと怒号が飛んで大騒ぎになった。日没後には、皆無言で食事。終わると、あっという間に立ち去っていった。

 何度かお世話になったが、場所によって「メニュー」はまったく違う。失礼な言い方だが、「当たり外れ」がある。共通していたのは、デーツ(ナツメヤシの実)と果物のジュース。断食後のため、まずはこれらを口に入れて体をいたわるのだという。

 オマーンの首都マスカットでは、中心部のモスクの外に500人ほどが集まっていた。エジプトとは違い、地べたに座るスタイル。羊肉がのった大皿の米に水、デーツ、ヨーグルトのような飲み物。私はパキスタンやインドからの出稼ぎ労働者と一緒に車座になり、肉と米を手で口に運んだ。

車の中でもイフタール

 「さあ、あなたもどうぞ」

 イフタールの時間帯に配車サービスのウーバーに乗っていると、運転手が袋からデーツを取り出し、私にも勧めてきた。客がいる間は食堂に立ち寄れないため、こうして車のなかで簡単な食事を取るのだという。

 一方、この時間帯はタクシーをつかまえるのが難しい。カイロでは、ウーバーを手配しようとしたら「乗車可」の車がゼロだったこともある。少ないタクシーに声を掛けたら料金はいつもの3倍なんてことも。「それなら乗らない」と言えば、いつもは値引き交渉に応じてくれるが、あっさり走り去ってしまう。

 カイロでは、車で道を走っていると若者が駆け寄ってきて、水やデーツ、果物が入った袋を渡されることがある。これも、貧しい人や帰宅が間に合わない人たちのために、慈善団体などがボランティアでやっているのだという。

イフタールで異文化交流

 国際都市ドバイの住宅街「サステイナブル・シティー」では、ちょっと変わった取り組みが行われている。64カ国、約450家族が住む地区だが、昨年からイスラム教徒が近所の欧米人らをイフタールでもてなしている。

 運営団体のカリーム・エルジェシッルさん(45)は、「残念なことだが、世界ではイスラム教の負のイメージがある。イスラム教についてちゃんと理解してもらい、国際都市ドバイならではのことがしたかった」と話す。発案したのはエルジェシッルさんの妻。

 「イスラム教徒でない人たちが抱くラマダンのイメージは断食だけ。もっと文化を広く知ってもらい、楽しい側面があることも伝えたかった。それが、住民同士のつながりにもなる」と言う。

 昨年のラマダンは35組がマッチングし、その後、お互いを行き来して再び一緒に食事を楽しむ住民もいるという。また、住民がそれぞれの国の料理を持ち寄って、盛大にイフタールを楽しむイベントも開催。住民や地区の学校の子どもたちがモスク(イスラム礼拝所)を訪れ、イスラム教について学ぶ機会も設けた。

アポは午前1時

 「来ないでください」

 ラマダン中にイラクへの出張を…

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