【動画】ほうほう弁護士劇場「ブラック企業」(タイトルコール・西村久美子弁護士)=安冨良弘、西田堅一撮影

ほうほう弁護士劇場〈2〉

身近なトラブル、どう対処したらいいの? 大阪の弁護士が自ら演じるコントを見て、法的なアドバイスに「ほう!」と納得。「ほうほう弁護士劇場」、第2幕です。

やっと見つけた就職先が、過重労働を強いる「ブラック企業」だったらどうすればええの? 今回は、そんな新入社員の切実な悩みに答えます。

《気になる答えは…》

そもそもブラック企業って?

Q この新入社員、とんでもない会社に入ってもうたね。でも、「ブラック」ってよく言うけど、何か基準があるんですかね?

A 一般には、広く「違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業」を指すと言われています。厚生労働省はブラック企業について明確に定義していませんが、一般的な特徴として、①労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す②賃金不払い残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い③このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う――の3点を挙げています。

長時間労働 その上限は?

Q そうなんですか。この社員、残業で全然帰らせてもらえへんみたいやけど、どれくらい残業すると「極端な長時間労働」となるんですかね?

A 毎日泊まり込むような働き方をしたら明らかに「極端な長時間労働」でしょう。労働基準法は、労働時間の上限を原則1日8時間、1週間40時間と決めていて、1週間に1日は休日を与えなければなりません。この労働時間を超えて働かせる場合、会社(使用者)側と社員(労働者)側が「何時間まで残業させてもよい」と合意する協定を結ぶ必要があります。労基法第36条の規定に基づくので、「さぶろく(36)協定」と呼ばれています。ただ、「働き方改革」による法律改正で、協定があっても残業時間は年720時間以内(休日労働を除く)などの上限が罰則付きで定められました。中小企業は来年4月からの施行ですが、この新入社員はゆうに上限を超えますよね。

過労死ライン、そのデンジャラスな実態

Q じゃあ、この会社はやっぱり真っ黒ですね。でも彼の場合、違法やなんや言う前に倒れてしまいそうですね。

A その通りです。おそらく「過労死ライン」を超えているでしょうね。

Q 過労死ライン、デンジャラスな響きで聞いたことあるけど……。どんな意味でしたっけ?

A 一般に月80時間以上の時間外労働は心身を破壊し、過労死や過労自殺を引き起こす危険があるとされていて、その80時間を過労死ラインと呼んでいます。労働基準監督署は過労のせいで脳や心臓の疾患で亡くなることを「過労死」として、補償の対象になる労働災害、いわゆる労災と認定しています。

Q もし彼が残業を続けて倒れてしまったら、どうなるんですか?

A 脳や心臓の疾患で亡くなったり、うつなどで休職や退職したりした場合、労災と認められる可能性が高いです。労災と認められると、本人や遺族に国から補償金が支払われます。さらに、むちゃな働かせ方を強いた会社に対して「安全配慮義務違反」として損害賠償を求めることができます。

Q そうならないことを祈りますわ。そうそう、残業代も出さへんとゆうてますが、許されるんですか?

A 許されません。残業では、基本となる賃金に割り増しした賃金(残業代)を支払わなければいけません。今回のように「お前の仕事が遅い」と社員の責任にしてしまい、残業代を支払わないのは悪質なブラック企業ならでは、と言えます。

ブラック企業ってどのくらいあるの?

Q この社長、自分で「ブラック企業あるある」なんて言っていますが、こんなひどい会社って実際にはどれくらいあるんですか?

A 厚生労働省が昨年11月、過労による労災請求のあった事業所などを重点的に立ち入り調査した結果、対象となった8494事業場のうち5714事業場で労働基準関係法令に違反し、2802事業場で違法な時間外労働がありました。

Q そんなにあるんですねえ。こんな会社に入ってしまったら、あきらめるしかないんですかね……。

A ブラック企業はひどい労働環境をあえてそのままにしているわけですから、社内で解決しようと思っても難しいでしょう。地域や業種ごとにつくられた労働組合・ユニオンや会社近くの労働基準監督署、弁護士など、外部に相談することをおすすめします。ちゃんと休みが取れたり、残業代を支払わせたりすることができるかもしれません。

辞めたい…でも辞めさせてくれない

Q でも、この新入社員は辞めたがってるけど、辞めさせてもくれないって。さすがにこんなのはコントの作り話ですよね?

A ところが、現実にあるんです…

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