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 打者のスイングの特徴や投げた球の回転数も、最新機器で一目瞭然――。野球のギア(道具)にもITや最新技術を取り入れた革新の波が来ている。

 5月下旬、広島県呉市の多目的広場の一角。ネットに向かって打撃練習をしていた呉の野球部員たちが、赤沢賢祐部長(40)のタブレット端末の画面をのぞき込んだ。

 スイングの速さは最速時速131キロ――。表示されていたのは、3年生の中畑仁志選手(18)のバットに取り付けていた機器から送信されたデータだった。スイングの速度や軌道など8項目を測定して、専用のアプリを入れたスマートフォンなどに送れる。

 測定結果は、今春の選抜高校野球大会で甲子園に出場した後の結果と比べて遅かった。「1カ月前より落ちてるぞ」と赤沢さん。中畑君も「確かに、今日のスイングはヘッドが走っている感じがしなかった」とうなずく。この日は学校の試験期間が終わり、本格的な練習を再開したばかり。中畑君は「振り込みが足りていなかった」と分析し、「もっと振っていけば速度も戻ると思う」と話した。

 機器はミズノ(大阪市)が2015年に発売した。中畑君ら3年生の部員の一部は学校の総合学習の時間の研究課題でも、この機器を使うことにした。1年かけて自分のデータと練習内容を比べるなどして論文を書く。中村信彦監督(64)は「どう振ればヘッドスピードが速くなるか、感覚だけで分かる選手は一握り。自分で考えながら練習するようになることは大きい」。

 投球練習の用具でも、情報技術を取り入れる動きがある。SSK(大阪市)は18年、大きさや質感を公式球にそろえた球にセンサーを埋め込んだ測定装置を発売した。球速のほか、投手の指をはなれてからミットに収まるまでの「回転数」が測れる。

 「球速はそれほどでもないのに打てない投手が確かにいる。調べると回転数が高いことがある」。SSKベースボール事業部開発生産チームの香月昭夫次長は指摘する。回転数が高い球ほど「キレ」や「伸び」を感じやすいという。

 回転数を測る装置は、まず米国や日本のプロ野球で導入されたが、大がかりで持ち運びもしづらかった。加速度や回転を測るセンサーが小型化されて開発が進んだ。SSKによると、出荷された数千台のうち半数以上が高校向けだという。

 負担軽減を目指した新商品も登場している。スパイクでは「脱金具化」の流れが進んでいる。

 アシックス(神戸市)は18年12月、新しいスパイクを発売した。靴底の金具をやめて、樹脂によるスタッド(突起)を配したのが特徴だ。

 金具のスパイクは踏ん張りがきくが、長時間使うと「下半身の筋肉が張る」「金具からの突き上げで疲れる」などの声があった。

 そこで、足裏の圧力の散り方を分析した上で、打撃時の母趾球(ぼしきゅう)直下の回転、ダッシュ時の前方向へのグリップ、守備などの際の横方向のグリップなど走攻守の動きに対応した3ブロックのスタッドを設けた。

 アシックスの広報担当者は「足が疲れると転倒などのけがが起きやすくなる。足元から競技者を守りたい」と話した。(波多野陽)