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 竹工芸の評価が近年、海外で高まっている。別府竹細工で知られる大分県の県立美術館では、米メトロポリタン美術館所蔵品による「竹工芸名品展」(30日まで。東京、大阪に巡回)が開催中だ。繊細かつダイナミックな竹の造形美を見れば、人気の理由が見えてくる。

 荒ぶる生き物のごとく躍動感にあふれたオブジェや、精緻(せいち)な編み目がすがすがしい景色を想起させる花籃(はなかご)……。

 竹工芸の近現代史をたどるような大分県美の展覧会。目を引くのは、竹のしなやかさを生かし斬新な表現を見せる芸術作品の数々だ。

 竹工芸の分野で初めて人間国宝になった別府出身の生野祥雲斎(しょうのしょううんさい)(1904~74)ら人間国宝6人を含む、作家44人の優品75件が並ぶ。明治から現代まで、竹工芸作品を系統的に網羅した企画展は初めてだろう。

 出展作は、米国在住のアビー夫妻が米ニューヨークのメトロポリタン美術館に寄贈予定の「アビー・コレクション」。2017~18年に同美術館であった竹工芸展は大盛況で、日本展は里帰り展として企画された。

 竹は成長の早い植物で、日本では古くは花を盛るかご(正倉院宝物)が残り、近世以降は茶の湯文化とともに竹の茶器が作られた。建築資材やざる、扇子など実用品としても活用。鑑賞の対象となる竹工芸作家が出てきたのは明治に入ってからだ。

 飯塚琅●斎(ろうかんさい、●は王へんに干)(1890~1958)は自由な編み方で豊かな創造性を吹き込み、竹工芸の地位を引き上げた1人。出展作の「花籃 旅枕」は真竹を大胆に編んだ作品だ。1940年代前半のものだが、格子状の外観は北欧デザインにも通じるモダンさがある。

 展覧会を監修したメトロポリタン美術館アジア美術部のモニカ・ビンチク学芸員が「工芸品とアート作品のターニングポイントになった名品」と紹介するのが、阪口宗雲斎(そううんさい)(1899~1967)の「果物籃 水月(すいげつ)」。両端の竹の輪からたどっていくと、かごは竹のひと節からできていることに気づき、作品に込められた遊び心とそれを形にする至芸に驚かされる。

 昭和半ば以降には、彫刻や絵画のような個性派も目立つように。本間一秋(かずあき)(1930~2017)の「いぶき」は生命が芽吹く瞬間を思わせ、本間秀昭の「流紋」は水しぶきが感じられるほど躍動する。プロペラのような植松竹邑(ちくゆう)の「涼風(すずかぜ)立つ」は力強さと軽やかさが同居する。居並ぶ名品が、竹工芸の奔放さや奥深さを教えてくれる。

 ビンチク学芸員は「曲線が滑らかで編み目が美しいところに魅力がある。自然の素材にどう作家の創造性を加えて芸術作品にするか。精巧な造形に日本の美意識が感じられる」と話す。

 世界的人気の竹工芸だけに、米サンタフェなどには竹工芸を扱うギャラリーがある。

 「花籃 驟雨(しゅうう)」を出展している大分在住の岐部笙芳(きべせいほう)は、約15年前に海外から引き合いがあり、米国で個展を開いてきた。「日本では民芸品の一つとみられがちだが、海外では芸術品として扱われる。肩書がなくても良いものは良いと評価してくれるところに、竹工芸の可能性を感じる」。今月下旬には再び米国で個展を開く予定だ。

 展覧会に刺激され、未来の竹工芸アーティストが誕生することを期待したい。(安斎耕一)