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 老後に向けた資産形成を呼びかける金融庁の審議会の報告書を、麻生太郎金融担当相が11日、受け取らないと決めた。本格的な高齢社会を迎え、必要な蓄えの額は多くの人の関心事。報告書の内容は政治的に打ち消されたが、年金の行方など退職後のお金を巡る有権者の不安は消えないままだ。

 自民党の二階俊博幹事長は11日午前、党本部に記者団を急きょ集め、金融庁に報告書の撤回を含め厳重抗議したことを明らかにした。「国民に誤解を与えるだけではなく、むしろ不安を招いておって、大変これを憂慮しております」

 背景には、この報告書問題が参院選に影響することへの懸念がある。二階氏は「我々選挙を控えておるわけですから、そうした方々に迷惑を許すようなことのないように注意したい」と説明。麻生氏が報告書を受け取らない考えを表明したのは、この直後だった。

 通常国会の会期末は26日に迫る。政権は参院選での勝利を第一に、今国会で野党との対決ムードを回避する戦略に腐心してきた。内閣提出法案を最小限に絞り、2019年度予算成立後は、激しい論戦に発展しかねない予算委員会の開催に応じない姿勢を貫く。

 その国会最終盤で報告書問題が噴き出し、政権側は火消しに躍起になった。

 公明党の山口那津男代表は11日の記者会見で「与党の枢要な人に(金融庁から)事前に何の説明もなかったのではないか。猛省を促したい」と語気を荒らげた。自民党の岸田文雄政調会長は「(報告書が)公になること自体、大きな問題ではないか」と記者団に不満をぶつけた。

 こうも政権が神経をとがらせるのは、年金問題のトラウマがあるからだ。第1次安倍政権だった07年の国会は年金記録のずさんな管理問題が焦点化。参院選で大敗を喫し、首相退陣とその後の政権交代につながった。自民党幹部は「最悪のタイミングだ」と嘆く。

 野党側は攻勢を強め、立憲民主党の枝野幸男代表は11日の党会合で「選挙前では都合が悪いから受け取らない、撤回しろという話は、ちょっとあぜんとせざるを得ない。国民に説明しない、ごまかすということがいよいよ顕著になってきた」とし、引き続き予算委の開催を求める考えを示した。一方、自民党の森山裕国会対策委員長は同日の会見で「報告書そのものがなくなった」と述べ、応じない考えだ。

 ただ、いったん明らかになった問題が参院選で争点化するのは避けられない。安倍晋三首相に近い自民党議員の一人は「報告書を受け取らないとか、逃げているような対応ではダメだ。逃げている印象をもたれると、参院選にどんな影響が出るかわからない」と懸念する。(明楽麻子)

金融庁幹部「準備不足、力量不足だった」

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