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 無理やり自宅から連れ出され、軟禁状態に置かれた――。東京都にあるひきこもり自立支援施設の運営会社を相手に、元入所者の30代男性が2月、550万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。こうした民間事業者は一部で「引き出し業者」と呼ばれ、子どものひきこもりの長期化に苦悩する親が契約しているといいます。一方で、人権侵害の疑い、親子関係の断絶などの弊害があると批判も受けています。

 「悪い夢のようだった。心の傷は一生消えない」

 6月6日。東京地方裁判所の傍聴席で出会った原告の男性は閉廷後、そう記者に語った。

 昨年5月のことだ。原告の説明や訴状によれば、自室で食事をしていたところ、突然見知らぬ4~5人の男と父親が部屋に入ってきた。父は「これからこの人たちのお世話になりなさい」と言い、部屋を出た。

 家を出るのを拒み、知り合いに電話で連絡をとろうとしたが、男たちに体を押さえつけられた。「助けて」「拉致だ」と叫び抵抗したが、両脇をおさえられ、車に押し込まれたという。

 連れて行かれたのは東京都新宿区の施設。何度もスタッフに解放を求めた。だが施設側は「あなたは『未成熟子』なので権利はない」などと言い、拒否された。当初8日間は内側からあけられないカギがかかる監視付きの部屋で軟禁状態に。恐怖から食事にも手をつけられずにいたところ、説明も同意もないまま精神科病院に医療保護入院させられた。入院後しばらくの間、拘束帯をされオムツをつけられた。入院は50日間に及んだ。

 退院後に施設に戻る際「誓約書」を書かされた。英会話やパソコンなどのカリキュラムへの参加、家族に連絡をしないことなどを約束させ、守れなければ再入院に同意するという文面だった。

 原告は、入所者仲間と施設近くの法テラス(日本司法支援センター)に駆け込み、その後現在の弁護団メンバーにつながって、施設から脱出した。連れ出しから3カ月が過ぎていた。「なぜあんな施設と契約したのか、親へのしこりもある」

 弁護団によると、入所者の多くは携帯電話や財布を取り上げられ、外部への連絡を制限されている。本人のSOSを受けて、この会社の施設から数人を弁護士が「救出」した。この原告男性とは別に、同じ施設に子どもを入所させていた親が、半年間の研修費などとして支払った685万円の返還を求める訴えを起こしている。弁護団は逮捕監禁罪での刑事告訴も視野に入れている。運営会社は暴力的連れ出しや違法行為を否定、裁判で争う姿勢だという。

 この会社に朝日新聞が取材を申し込んだところ「事実関係は裁判で明らかにすべきだと考えるので回答は差し控える」との答えだった。

 川崎殺傷事件や元農水次官が長男を殺害したとされる事件を受けて、ひきこもる子がいる親の不安は高まっている。家族会などへの相談件数もはねあがっている状況だ。弁護団の林治弁護士は「『ひきこもり』のマイナスイメージが強まれば、半年で数百万円という高額な費用を払ってでも、業者に頼ろうとする親が急増するのでは」と危機感を強める。

 行政窓口で期待した支援が受けられず、業者のウェブサイトを見て契約する親もいるという。「引き出し業者は『全国どこでもすぐ訪問する』『必ず自立させる』とうたう。助かった、頼もしいと感じる親がいるのは事実だ。だが結局は親子の断絶を生み、回復を一層困難にする恐れが強い」

■費用は半年500万円、家族崩…

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