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 名古屋城コンクリート製現天守の解体の是非について、文化庁が近く結論を出す可能性がある。河村たかし名古屋市長にとって、天守の木造化を実現するために早期の解体が不可欠だ。ただ解体が許可されても、木造化が目標の2022年末に間に合うかは不透明だ。

 名古屋城天守木造化は河村市長の公約だが、スケジュールが大幅に遅れている。

 本来は昨年10月の国の文化審議会で木造化計画の許可を得る予定だった。しかし石垣の保全を重視する市の有識者会議「石垣部会」と対立。文化庁から「石垣部会と認識が一致していない」と指摘され、木造化計画の提出を見送った。

 完成時期の見直しが迫られる中で浮上したのが、現天守の解体を木造化計画から切り離し、先に進める異例の方法だ。文化庁は「石垣にダメージを与えない工法が示されれば、受理して可否を検討する」と市に返答。石垣部会からは「石垣や地下遺構の調査がまだ行われておらず、現況把握ができていない」と批判されたが、市はこれらを「意見」として添付して解体許可を申請し、5月17日に審議入りした。

 河村市長は4月、木造化が頓挫したり遅れたりした場合は「関係者全員切腹です」と発言するなど、いらだちを隠せなかった。だが審議入りした5月には「市民のみなさんが切望する木造復元にグッドニュースが来るであろうと期待してます」と自信をのぞかせた。

 市によると、解体許可の申請書は200ページを超え、担当職員は文化庁職員とひざ詰めで文言などを調整したという。市幹部は「文化庁の担当者も、これなら審議会の先生に説明できると判断したはず」と話す。

 さらに市が追い風とみるのが、「観光立国」を目指す政府の姿勢だ。4月に施行された改正文化財保護法は、文化財の「保存」とともに「活用」にも重点を置く。河村市長は4月末に文化庁を訪ね、名古屋城の昨年度の入場者が歴代3位の約221万人を記録したことなどをアピール。木造化が国の政策に貢献すると訴えた。

文化庁許可でも22年の完成は不透明

 文化庁が現天守の解体を許可しても、木造天守の22年末完成は楽観できない。

 市の計画では、11月に外部エレベーターの撤去に着手。来年3月に天守閣の解体を始め、8月に終える。その間に木造化の許可を得れば、22年末に間に合うと説明する。

 だが、当初は20年6月から31カ月かける予定だった木造化工事を7カ月短縮する必要がある。市の試算では、1日12時間ほどと見込む作業時間を4時間ほど延長し、作業員を3~4割ほど増やせば「十分対応が可能だ」(市の担当者)という。

 ただ、施工する竹中工務店から「復元の許可が見通せないと工程を示せない」と伝えられ、工期を短縮できるか協議できていない状況だという。さらに文化庁から木造化の許可を得るには、石垣の調査や保全方針などについて、石垣部会の了承を得なければならない。

 ある市幹部は「これ以上の工期短縮は難しい」と、早期の解体が認められなければ、完成時期の見直しは避けられないとの認識を示す。実現が遅れた場合、最大505億円とした事業費が膨らむ恐れもあるという。(堀川勝元)

名古屋城天守木造化のスケジュール

●木造化計画の許可

(従来の予定)2018年10月

(現状)石垣部会から石垣調査・保全方針の了承を得られず、

    見通し立たず。

●現天守の解体

(従来の予定)2019年9月

(現状)文化庁で審議中。許可が得られれば20年3月開始。

●木造天守の着工

(従来の予定)2020年6月

(現状)着工時期示を示せず。

●木造天守の完成(工事期間)

(従来の予定)2022年末(31カ月)

(現状)2022年末(24カ月に短縮する必要)