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 刑事事件の容疑者を香港から中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」改正案をめぐり、香港政府の林鄭月娥・行政長官は15日、緊急記者会見を開き、立法会(議会)での審議を無期限で延期すると発表した。一方、林鄭氏は改正案を「撤回しない」と強調。大規模デモなどで示された強い民意に一定の譲歩をした形だが、抗議運動が収まるかは見通せない状況だ。

 香港政府は20日の改正案の採決を目指していた。林鄭氏は延期の理由として市民の意見が対立し警察と若者の衝突に発展したことなどを挙げ、「平穏な社会を取り戻したい」と述べた。

 「(市民との)意思疎通が足りなかった」とも述べ、期限を設けずに市民や各団体から意見を聴取し改正案を修正する考えを表明した。議会での審議再開の時期については「年内は難しい」として、来年以降になるとの認識を示した。

 林鄭氏の会見を受け、9日に「103万人」を動員するデモ行進を主催した民主派団体「民間人権陣線」も記者会見し、改正案が撤回されるまで抗議を続ける方針を明らかにした。呼びかけていた16日の大規模デモも計画通り実施するとしている。

 条例改正を支持してきた中国政府は、香港政府の方針転換を容認する談話を発表した。米中通商紛争が激化する中、米国は条例改正問題でも、「一国二制度」が脅かされると批判を強めていた。月末には主要20カ国・地域(G20)首脳会議が控える中、習近平(シーチンピン)指導部としては新たな火種を増やしたくないとの意向も働いたとみられる。(広州=益満雄一郎、香港=延与光貞)

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〈香港の逃亡犯条例改正をめぐる問題〉 昨年、台湾で殺人事件を起こした香港人の男が香港に逃げ帰り、台湾当局の訴追を免れたのがきっかけ。今年2月、男の身柄を台湾に引き渡すため香港政府が発表した改正案は、犯罪容疑者の身柄を中国本土に引き渡すこともできるようになる内容だったため、乱用を恐れた民主派が強く反発。経済界などからも懸念の声が相次ぎ、今月9日には主催者発表で100万人超の市民らが抗議のデモをした。