[PR]

 かつてあった日本の姿を映す「廃虚」は、全国各地に残っています。中でも、茨城県には、有名な廃虚があります。水戸市内の使われなくなった浄水場もその一つ。実はここ、映画「カメラを止めるな!」のロケ地です。実際に取材をしてみると、レトロな魅力だけでなく、保存や活用に悩む「意外な悩み」も見えてきました。

60年で役目を終える

 市によると、ここの名前は旧芦山浄水場。1932年、旧渡里村(現在の水戸市渡里町)に完成しました。それまでは井戸水などを利用していましたが、大正から昭和にかけて人口が急増し、衛生的に悪いことや、消火設備を確保するため建設されました。

 この場所が選ばれた理由は、川が近く、そこの中州の下を通るきれいな地下水を用いるため。後に市の人口がさらに増え、複数の浄水場と一つのダムが完成し、93年に役目を終えたそうです。

 その後、2015年ごろから耐震調査や雨漏りの補修などをし、市が力を入れていたフィルムコミッションに登録しました。

「相棒」や「欅坂」も

 ロケ地としての使用料金は無料。登録後は、テレビドラマや戦隊モノの撮影に年5件ほどのペースで使われていましたが、「カメ止め」のロケ以降は問い合わせが殺到したそう。18年度の撮影件数は計14件。人気ドラマ「相棒」の映画やアイドルグループ「欅坂46」のミュージックビデオの撮影にも使われています。

 ロケ地として第二の人生を歩み始めた芦山浄水場ですが、市は懸念も抱えています。耐久性に問題があるのです。老朽化は止められず、所々に修理跡がありました。ポンプ機械室の窓も強風などで一部割れたため、新たにガラスをはめるなどして対応したそうですが、今後もこういった問題は起こり得ます。

 ですが、浄水場としての役目は終えているため、管理する市水道部としても維持費を多くつぎ込めません。ロケ地ツアーなどのイベントを開くにしても、安全性が保証できなくなる悩みがあります。

市の財産になるか

 仮に改修工事をしても、良さである「廃虚らしさ」が失われることになります。映画の舞台を「聖地」として巡るロケツーリズムが人気になってきた今、市もその勢いに乗りたいけれど、乗り切れない、というのが現状のようです。

 市内には浄水場以外にも、県三の丸庁舎や三菱UFJ銀行水戸支店など、補修をしつつ現在も使われている近代建築があります。部分的な補修をしつつ、ロケ地として維持できれば、市の財産になり得るのではないでしょうか。

 市の担当者は「撮影の相談があれば、可能な限り協力していきたいし、ロケ地のツアーも出来るならばやりたい」とした上で、「それも安全あってのこと。建物の維持については、よく考えていかないといけない」と話しました。(松岡大将)