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 6月26日、大津市にある石山高校のグラウンド。練習前、谷村和哉選手(3年)はベンチに座ったり、歩き回ったりしていた。約1時間後、目を大きく見開いた。手にしたスマートフォンで、自らのツイッターアカウント「谷和エッセイスト」に川柳をしたためた。

夢バトル 取り響かせむ 泣く校歌

 前日の夏の大会の抽選会で、長浜北との対戦が決まった。高校最後の夏。「勝利をつかみ取り、泣きながら校歌を歌いたい」という思いで詠んだ。スマホをのぞき込んだ3年生の岡章太郎、浜公太朗両選手は「この一句を待っていた。気持ちが引き締まる。悔いのない夏にしよう」と声をそろえた。

 谷村選手は1年生の冬、芸能人らが詠んだ俳句などを専門家が評価、指摘するテレビ番組を見たことで川柳、短歌、俳句を始めた。短い言葉の中で思いを表現することにひかれた。ただ川柳は小学校の夏休みの宿題で触れた程度。番組を見たり松尾芭蕉や与謝蕪村らの作品、季語を調べたりして独学で続けている。

 テーマは新学期やテスト、片思いなど日常生活で感じたことが多い。言葉のアイデアは登下校中の電車から見える風景、友人との会話から浮かんでくる。これまでに70句ほど詠んだ。

100の夏 石舞(こくぶ)に勝る 者なかれ

 昨夏の彦根工との試合前、硬い表情を見せる先輩らの前で詠んだ。みんなの緊張を和らげる思いからだった。当時を覚えている井上開晴主将(3年)は「あれでみんな笑顔になった。今年も一句が楽しみ」。飛田宏典監督は「谷村はチームに欠かせないムードメーカー。彼の『陽』の部分が試合で発揮されることを期待している」と語る。

この無念 晴らす日までの 大車輪

 新チームになったばかりの時、練習試合でけがをした翌日の休みに仲間と琵琶湖で泳いだ。その後、飛田監督に「けがをしているのに」としかられた。チームを引っ張る上級生として恥ずかしかった。監督の信頼を取り戻したい思いで「見返し」をテーマに詠んだ。

 作品づくりの才能は評価され、少年野球教室や高校の新入生への部活紹介でも披露した。17音に合わせて自由に表現できる川柳が一番好きだという谷村選手は「自分の本音をうまく表現できたり、場を和ませたりできるのが魅力」と話す。

責任の 重みが我の 応援歌

 昨秋の試合で先発したが4回までに5失点した。悔しさから「先発」のテーマで詠んだ。この一句を胸に刻んで、球のキレを磨いてきた。まもなく最後の舞台。集大成として臨む。(北川サイラ)